上阪徹『〆切仕事術』



 上阪徹著『〆切仕事術』(左右社/1836円)読了。

 「〆切守り率100%のメソッド大公開」という帯の惹句のとおり、著者は23年間フリーライターをやってきて一度も〆切に遅れたことがないそうだ。
 しかも、コラムとかならともかく、著者のおもな仕事はブックライター、つまり書籍の聞き書き構成で、これまでに100冊近くを手がけてきたという。

 著者の3年前の本『職業、ブックライター。』を当ブログで取り上げたとき、私は次のように書いた。

 副題の「毎月1冊10万字書く」は、私もクリアしている。
 てゆーか、丸1ヶ月あれば1冊の本が書けるのは、ライターとしては平均的能力で、とくにすごいというわけではない。ま、質が問題なわけだから、書く速さだけ比べても意味がないけれど……。
 著者のすごさはむしろ、20年間にわたってブックライターをつづけながら、一度も〆切に遅れたことがない、という点にある。この点は素直に脱帽。



 100冊近く本を書いて一度も〆切に遅れたことがないというのは、ライターとしては奇跡に近いが、出版業界外の人にはすごさがわかりにくいかもしれない。
 「なんで? 〆切に遅れないなんて、社会人としてあたりまえのことじゃん」と思う向きもあろう。
 たとえば製造業の場合、納期に遅れるのは許されないことで、やらかしてしまったらヘタすりゃ損害賠償ものなわけだし……。

 しかし、物書き稼業だけはそうではないのだ。少なくとも、これまでの時代は。

 だが、本も雑誌も売れなくなり、物書き業界が「椅子取りゲーム」的状況になっているいまは、〆切を守れないルーズなライターから先に切り捨てられていく時代なのである(他人事ではない)。

 本書は、著者がどのようにして「〆切守り率100%」を死守してきたかを明かしたもの。私も、「ぜひとも学ばせていただきたい!」との思いで拝読した。
 物書きにしか参考にならない本ではなく、〆切のあるすべての仕事に役立つ内容だが、第一義的には「ライターのための〆切仕事術」の本なのである。

 面白いのは、昨年来ベストセラーになっている『〆切本』と、本書が同じ版元から出ていること。著者もそのことに言及しているが、2つの企画が重なったのは「本当に偶然」だとか。

■関連エントリ→ 『〆切本』

 後半の第3章と終章は凡庸な内容で、「前半で書きたいことは書き尽くしちゃったのかな」という印象だ。
 ただ、前半には傾聴すべきアドバイスが多い。

 ほんとうにそのとおりだと思ったのは、次の言葉。

 若い書き手の方などに講演するときによくする話があります。原稿を書く仕事というのは、二◯◯点満点である、と。
 何かといえば、原稿のクオリティ一◯◯点、〆切を守ること一◯◯点です。
 先にも書いたように、〆切を守らない人も多い業界ですから、〆切を守るだけで、これだけの価値があるぞ、ということをまず伝えたいわけですが、それだけではありません。
(中略)
 二◯◯点のうち、原稿のクオリティ一◯◯点を取るのは、極めて難しいのです。ところが、もう一◯◯点の〆切はどうか。
 ただ期日通りにきっちり仕上げるだけ、なのです。それだけで一◯◯点が取れてしまう。とても簡単ではないか、ということです。

 

 巻末に掲げられた「〆切を守るための10箇条」(本書の要点を箇条書きにしたもの)を、拡大コピーしてデスクの前に貼っておくことにする。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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