伊藤秀成『ひきこもり・ニートが幸せになるたった一つの方法』



 昨日は、都内某所で取材。たぶん年内の取材はこれが最後。


 行き帰りの電車で、伊藤秀成著『ひきこもり・ニートが幸せになるたった一つの方法』(雷鳥社/1296円)を読了。
 ひきこもり・ニートに株式投資を勧めるという突飛な主張から、「2ちゃんねる」でスレッドが立つなど大きな話題となった本である。

 著者は臨床心理士で、2012年から16年にかけて、公的機関の「ひきこもり相談員」を務めた経験をもつ。
 その経験をふまえ、一切のキレイゴトを排してホンネの提言をしたのが本書。現役の相談員なら立場上けっして書けないことを、リタイアした立場ゆえにビシビシ書いているのだ。

 著者が相談員をしていた間、ひきこもりから抜け出して正社員として就労を果たしたケースには、たった一つしか遭遇しなかったという。
 そのことをふまえ、「ひきこもり・ニートとなった人の中で就労・自立する人は100人に1人もいない」と、著者は断言する。だから、就労・自立をゴールとする現在の支援のありようそのものが、じつは「無理ゲー」なのだ、と……。

 第一部でそのように厳しい現実を示したあと、後半の第二部で展開されるのが、「ひきこもり・ニートは株をやりなさい」との提言。ネット投資なら誰にも会わずに一人でできるなど、ひきこもり・ニートに適している点が多いというのだ。

 ただ、本書はいささか羊頭狗肉で、ひきこもりが株式投資で「自立」する道が説かれているわけではない。安定した銘柄の株を、売らずに「財産として長く持つ」ことを勧めているだけ。つまり、“運用益で生活費を稼ぎ出せ”という主張ではないのだ。

 株を持っていることで、株主優待・配当金・貸株金利等の利益を受け続けることができる。それだけで暮らしていけるわけではないが、少額でも自力で収入を得ることが自信につながるし、本人も親も「いま何をやっているの?」という問いに対する答えを持つことができる(=「無職です」ではなく、「個人投資家です」と言えるようになる)……と、著者は言う。

 「えっ、それだけ?」と拍子抜けした。『ひきこもり・ニートが幸せになるたった一つの方法』を求め、藁をもつかむ思いで手にした読者に、思いっきり肩透かしをくらわす本だ。 

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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