マーク・カーランスキー『紙の世界史』



 マーク・カーランスキー著、川副智子訳『紙の世界史――歴史に突き動かされた技術』(徳間書店/2592円)読了。書評用読書。

 読む前に想像していたよりもずっと面白い本だった。というのも、たんなる紙の技術史であるのみならず、さまざまな分野への広がりがあるから。

 これは、紙というフィルターを通した芸術史(美術史・文学史など)でもあり、出版史・メディア史・印刷史でもあり、さらには宗教史・政治史でもある。
 芸術や宗教などの歴史に、紙と印刷技術の誕生・発達・普及がいかなる役割を果たしてきたか――それが詳述される点が、興趣尽きないのだ。

 目からウロコのトピック満載。たとえば――。
 
 木材パルプが登場するまで、紙の原料は古布であり、米国の南北戦争時代には死んだ兵士の衣服を剥ぎ取るハイエナのような製紙業者が横行した(!)という。
 
 いまでこそ素晴らしい日本文化の一つとして認められている和紙は、ある時代までのヨーロッパでは粗悪な紙と見做され、軽んじられていた。
 ヨーロッパで和紙の優れた価値をいち早く見抜いたのは、画家のレンブラントであった。彼は、エッチング版画に日本から輸入された和紙を用いたという。

 活版印刷技術を発明して世界の歴史を変えたグーテンベルクは、その技術を富に変えることができず、貧窮のうちに没したという。

 膨大な文献を渉猟し、世界各国を取材して書き上げられた、重厚な歴史ノンフィクション。
 第18章「アジアへの回帰」では、著者が日本で取材した和紙業界の現状が、かなりの紙数を割いて詳述される。日本人にはここだけでも一読の価値あり。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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