日食なつこ『逆光で見えない』



 最近気に入ってます、日食(にっしょく)なつこ。
 Amazonのプライムミュージックにアップされていたので何の気なしに聴いてみたのだが、一聴してぐっと引き込まれた。

 私は不覚にも知らなかったのだが、このファーストフルアルバム『逆光で見えない』は、ちょうど一年前に出たものだ。



 生ピアノ弾き語りというスタイル(ただし、多くの曲はバンド形式)でありながら、フォークでもポップスでもなく、まぎれもないロック。本人の不敵な面構えからしてロック。ピアノから美しい火花が散るジャケが、彼女の音楽性をよく表現している。

 歌詞が素晴らしい。言葉のセンスが、いまの若手アーティストの中で抜きん出ている(日食なつこというアーティスト名自体に、すでに才気が見える)。

■参考→ 日食なつこの歌詞一覧リスト

 世の中には「人生応援ソング」というものがあって、それらの歌を聴いて「元気をもらった」り「勇気をもらった」りしている人がたくさんいる。
 だが、私はひねくれているせいか、一般に「人生応援ソング」にカテゴライズされる曲を聴いても、まったく元気や勇気をもらえない。どちらかというとサブイボが立つ。

 日食なつこの歌は、そんな私にとってさえ「人生応援ソング」として聴こえる。一般の「人生応援ソング」にある「クサさ」がなく、それでいて「生きづらさを感じている若者に力を与える歌になる」と感じさせるのだ。
 たとえば、次のようなフレーズ。

火花散らして飛んでゆけ非売品少女
ご無礼散漫で上等、せいぜい高くまで飛べよ
火花散らして飛んでゆけ非売品少女
花束なんていらない ひた走るには邪魔くさいよ(「非売品少女」)



 一般の「人生応援ソング」に私が感じるサブイボ感は、「ポジティヴなことが善」的な押し付けがましさと、「無意識の上から目線」ゆえなのだと思う(「それが大事」とか「愛は勝つ」とか)。

 いっぽう、日食なつこの創る歌詞には、そうした押し付けがましさと「上から目線」がない。
 たとえば「跳躍」の歌詞は、たぶん「引きこもり」に向けて書かれたものなのだと思うが、生きづらさを抱えた若者にも違和感なく聴ける「人生応援ソング」だと思う。

 「黒い天球儀」も、語の本来の意味で「人生応援ソング」になり得る素晴らしい曲。ピアノとドラムスのみのシンプルな編成なのに、ダイナミックにドライヴする演奏もよい。
 「いつか吐き出す最後の一呼吸が ためいきで終わってしまわないように」って、すごいフレーズだな。



 日食なつこ、2017年の大ブレイク候補だと思う。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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