ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』



 ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳『サピエンス全史――文明の構造と人類の幸福』(河出書房新社/上下巻各2052円)読了。書評用読書。

 48ヶ国で刊行の世界的ベストセラー、ジャレド・ダイアモンド、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグも絶賛……などと、すでに話題騒然の書。
 まだ40歳になったばかりのイスラエル人歴史学者(ヘブライ大学の歴史学教授)が、現生人類(ホモ・サピエンス)の歴史――すなわち人類史・文明史を鳥瞰的に描ききった大著である。

 上下巻合わせても600ページに満たないから、浩瀚な書というほどではないが、内容の密度が濃いので速読は不可能。私は丸一日がかりで読み終えた。

 歴史学のみならず、生物学・考古学・経済学・認知科学など、あらゆる分野の最新の知見を駆使して、非力なホモ・サピエンスが地球の覇者となるまでの道筋を、丹念に辿っている。

 目からウロコが落ちる思いがした箇所に貼った付箋が、たちまちいっぱいになった。

 私が最も強い印象を受けたのは、人類史における差別の歴史を概観し、その根源を問うた第8章「想像上のヒエラルキーと差別」である。短い章なのに、ここだけでヘタな新書1冊よりも内容が濃い。

 本書を取り上げた書評では、ジャレド・ダイアモンドの名著『銃・病原菌・鉄』と比較しているものが多い。
 たしかに、『銃・病原菌・鉄』が「西欧文明が世界を制覇したのはなぜか?」を問うた書だったのに対し、本書は「なぜホモ・サピエンスだけが繁栄したのか?」を問うた書だから、類書ではある。文明史そのものを鷲づかみにするようなスケールの大きさも、ダイアモンドの諸作と共通している。

 しかし、比べてみれば本書のほうが、「貨幣とは何か?」「国家とは何か?」「文明は人類を幸福にしたのか?」などという、より根源的な問いにまで踏み込んでおり、『銃・病原菌・鉄』よりもいっそう射程の広い本といえる。

 後半、つまり下巻に入るとちょっとダレる印象があるが、それでも、全体としては知的興奮に満ちた素晴らしい本。
 間違いなく、私が今年読んだ本のベストワン。今後、くり返し部分的に参照する「座右の書」の一つになるだろう。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
31位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
22位
アクセスランキングを見る>>