松林薫『新聞の正しい読み方』



 昨日は、企業取材でさいたま市へ――。
 行き帰りの電車で、松林薫著『新聞の正しい読み方――情報のプロはこう読んでいる!』(NTT出版/1728円)を読了。

 タイトルといい表紙といい、何とも地味な本で、見た目はパッとしない。が、中身は一級品であった。
 過去の類書と比べても遜色ないし、「新聞はネットで読むだけ」が当たり前になった時代向けにアップデートされた本としてはイチオシの内容だ。

 一人暮らしの若者で新聞をとっている(定期購読している)人はもうほとんどいないと思うし、一昔前ならフツーに共有されていた新聞リテラシーが身についていない人は多いだろう。
 本書は、主にそういう層をターゲットに、新聞の読み方をわかりやすく説いた内容である。

 著者は元『日経』記者。といっても、早期退職した人でまだ40代前半なので、“ネット時代の新聞の読まれ方”が肌感覚でわかっている。だからこそ、功成り名遂げた高齢の元記者が書くことが多かった過去の類書と比べ、ずっと「イマ風」な本になっている。

 新聞の作られ方・読み方の「キホンのキ」から説き起こされているが、中盤以降はだんだん上級者向けになり、長年新聞を読んできた者にとっても有益な内容だ。“新聞の読み方を素材としたメディア・リテラシー講座”という趣もあるし、ジャーナリズム論として読んでも示唆に富んでいる。

 私が「へーえ」と思った箇所を引用する。

 注意して記事を読むと、ニュースで「強く打って」という表現が出てくるときは、その人は「死亡」するか「(意識不明の)重体」になっているはずです。これは、「強く打つ」が、身体に回復し難いほどの衝撃を受けた場合に使われる表現だからです。「頭を強く打って全治二週間のけが」というケースはまずありません。
 これは、「頭蓋骨が陥没」「原形をとどめない」などと書くと読者を不快にしたり、遺族を傷つけたりする恐れがあるからです。



 みなさんは記事を読んでいて「警察は慎重に調べる方針だ」など「慎重に」という表現を見たことがあるかもしれません。考えてみると慎重に捜査をするのは当然なのですが、わざわざ記事がこう書いているときは、「当局は逮捕(起訴)できない可能性がかなりあると考えている」ことを示唆しています。言い換えると、裁判で有罪にできるだけの証拠が揃っていないか、法律の解釈上、罪に問いにくいケースだとみているのです。



 このような、新聞をより深く、「正しく」読むための知識を満載した良書。

 なお、本書のベースになったWEB連載がここでまだ読める。ただし、本はこの連載に大幅加筆されている。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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