レイ・カーツワイル『シンギュラリティは近い』



 レイ・カーツワイル著『シンギュラリティは近い――人類が生命を超越するとき』(NHK出版)読了。書評用読書。

 2005年刊の『ポスト・ヒューマン誕生――コンピュータが人類の知性を超えるとき』を、半分以下の分量に凝縮し、原題直訳の形に改題した「エッセンス版」である。
 いわゆる「2045年問題」(2045年ごろに、AIが人類の知能を超える「シンギュラリティ」=技術的特異点が到来するという問題)の、議論の発火点となった本だ。

■関連エントリ→ 松田卓也『2045年問題』

 原著刊行から10年以上が過ぎ、その間AIが長足の進歩をつづけたことにより、本書に描かれた未来が荒唐無稽なものではないことがわかってきた。また、「シンギュラリティ」という言葉自体も一般的になってきた。
 そうした変化をふまえ、読みやすいエッセンス版として再刊されたものであり、時宜にかなった刊行といえる。私自身、「『ポスト・ヒューマン誕生』は読んでみたいけど、分厚くて難しそうだしなァ」と、手を伸ばすのをためらっていた一人だ。

 読んでみて、「想像していたよりもまっとうな未来予測の書だ」と感じた。

 前半は“なぜシンギュラリティが起きるのか?”の理論的根拠が説明されており、もろ文系の私には難しくて退屈。
 だが、シンギュラリティ後の世界を具体的に予測していく第5章「衝撃……」で、一気に面白くなる。この章は、にわかには信じがたい驚愕の未来像が目白押しだ。たとえば――。

 いずれは食べ物から栄養をとるという面倒はまったく不要になる。
 やがて栄養は特殊な代謝用ナノボットによって血流へと直接送り込まれ、同時に血中や体内にあるセンサーが、それぞれの部位で必要な栄養について、無線通信で情報を送るようになるだろう。この技術は二◯二◯年代の終わりごろまでにはかなり成熟するはずだ。



 ただ、“やがてAIが意識を持つ存在となり、「魂をもつ」”と主張する第6章に入ると、内容が一気にオカルトじみてきて、アヤシゲになる。

 そして人類の文明は、われわれが遭遇する物言わぬ物質とエネルギーを、崇高でインテリジェントな――すなわち、超越的な――物質とエネルギーに転換しながら、外へ外へと拡張していくだろう。それゆえある意味、シンギュラリティは最終的に宇宙を魂で満たす、と言うこともできるのだ。

 

 ここだけ引用しても何のことやらわからないだろうが、全編を読んでも、この部分の意味はやっぱりわからない。
 科学者が「魂」とか言い出したらアカンやろ。こういうトンデモ記述さえなければ、未来予測の書として面白いのに……。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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