薬師寺克行『公明党』



 薬師寺克行著『公明党――創価学会と50年の軌跡』(中公新書/907円)読了。

 公明党の歴史と現在についての概説書である。著者は元『朝日新聞』政治部長で、現在は東洋大学教授。

 従来、公明党についての一般書は、ほぼ100%の否定か、ほぼ100%の肯定のいずれかに限られ、中立的なものは皆無に等しかった。
 本書は、少なくとも大枠においては中立的な内容であり、それなりに意義のある本といえよう。

 多くの資料を駆使し、独自取材も重ねてよくまとまっている本で、公明党入門としては及第点という印象だ。
 ただ、公明党について一通りのことを知る者にとっては、内容はあたりまえのことが大半で、驚きや発見はほとんどない。

 私にとって新鮮だったのは、ヨーロッパ等の連立政権との比較によって、自公連立政権が「世界的にも特異」であることを解説した第10章(「特殊な『選挙協力連立政権』――二◯◯九年~」)のみだ。

 また、本書は大枠こそ中立的だが、ディテールに偏りと悪意が感じられる。使用資料のセレクト、言葉の選び方などの中に、“中立を装った偏向”が潜んでいるのだ。
 たとえば――。

 かつての公明党は福祉や教育などの限られた分野でもっぱら活躍していたが、近年は財政や安全保障など、国家の根幹にかかわる分野でも、連立政権の中で存在感を発揮するようになった。
 そうした変化は、公明党という政党の成熟を示すものだと私は思うが、著者はそう考えないらしい。終章の結論部分には、次のような記述があるのだ。

 公明党は何をめざしているのだろうか。公明党はこれまで「福祉」や「教育」など特定分野で自主性を発揮してきた政党であり、自民党のようにあらゆる分野の政策に対応する「総合デパート」的な政党ではない。そうした政党が自民党と連立政権を作り、国政全般に対応していかなければならなくなった。では、公明党にその用意があるのだろうか。
(中略) 
 公明党が重視する「大衆」は、五◯年の間に大きく姿を変えてしまった。



 私はこの一節に、著者の公明党蔑視ないし軽視を感じる。
 「公明党は福祉や教育だけ頑張っていればよいものを、分不相応に国の根幹部分に手を伸ばしてくるな」という、この国のエリート層のホンネが透けて見える気がするのだ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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