森正人『戦争と広告』



 森正人著『戦争と広告―― 第二次大戦、日本の戦争広告を読み解く』(角川選書/1836円)読了。書評用読書。

 戦時下の日本を、当時の広告や雑誌記事から読み解いていく本である。
 すでに類書も多い(『戦争と広告』という同タイトルの本も過去にあった)から、類書にない斬新な切り口を出せるかどうかが、著者の腕の見せどころとなる。

 類書の一つ、早川タダノリの『神国日本のトンデモ決戦生活』や『「愛国」の技法』は、戦時下の広告を現在の視点から笑い飛ばすユーモア読み物であり、かなり笑える。それに比べると、本書はガチガチにアカデミックな著作で、笑いの要素は絶無。

 本書の価値・独創性は、読み物としての面白さではなく、別方向にある。

 一つは、「広告」といってもかなり広義の広告を扱っており、戦意高揚のために開かれた展覧会・博覧会の内容までが検証されている点。
 また、第4章「二一世紀における大東亜戦争」では、今世紀に入ってからの日本で開かれた「平和展示(戦争記録展示)」の内容が検証されている。そのような射程の長さが、本書の独創性である。

 ただ、第4章で百田尚樹の『永遠の0』の原作と映画版を比較検証している箇所は、さすがに間口を広げすぎで、蛇足だと思った。

 本書のもう一つの特徴は、著者が歴史学者ではなく、文化地理学を専門とする地理学者(三重大学准教授)である点。
 地理学者として、視覚文化研究の視点から昭和の戦争を論じたからこそ、本書では各種展示会の内容が重きをなしているのだ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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