斎藤環『ひきこもり文化論』



 一昨日から昨日にかけて、取材で北海道へ――。
 北海道に行くのは久しぶりだ(このブログを検索してみたら、前回行ったのは2010年)。
 取材と直接には関係ないのだが、今回、道内有数の桜の名所として知られる石狩市厚田区の「戸田記念墓地公園」の桜を堪能できた。広大な敷地に植えられた8000本の桜が、行った日にドンピシャの満開! 眺めていて陶然となった。


 行き帰りの飛行機と電車の中で、斎藤環著『ひきこもり文化論』(ちくま学芸文庫/1080円)を読了。仕事の資料として。

 ひきこもり問題の第一人者として知られる精神科医の著者が、折々に発表してきた文化論的考察を集大成したもの。
 他国の若者たちの状況をふまえた比較文化論的考察もあれば、ひきこもりを描いたフィクション(村上龍の『最後の家族』など)の解説もあり……と、多彩な内容だ。

 元の単行本の刊行は13年前なので、情報として古い部分もあるが、今年4月の文庫化にあたって、巻末に長文の「文庫版 補足と解説」が書き下ろされている。ひきこもりをめぐる現状をさまざまな角度から概説する優れた文章で、独立した価値がある。

 ひきこもりについての考察にはさすがの深みがあり、たくさん付箋を打った。そのうちの一ヶ所を引用しておく。

 現代の若者の自信と安心の拠り所は、もはや「お金」ではありません。それはほぼ「他者からの承認」に一元化されています。ひきこもっている当事者のほとんどが不安と葛藤にさいなまれているのは、誰よりもまず本人が、自らのひきこもり状態を深く恥じているからです。その状態が誰からも承認され得ないことがわかっているからです。
 当事者の多くは、「食べるために働く」という動機づけをリアルに感じることができません。彼らを働く気にさせようとして、困窮するまで追い詰めたところで、それは就労につながるとは限らないのです。社会参加を促そうというのなら、むしろ「他者からの承認」という動機づけに誘導するほうがはるかに効果的です。



■関連エントリ
斎藤環・山登敬之『世界一やさしい精神科の本』
斎藤環『家族の痕跡』
斎藤環『被災した時間』

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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