岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』



 岸見一郎・古賀史健著『嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社/1620円)読了。
 言わずと知れた、100万部突破の大ベストセラーである。前から気になっていた本で、仕事の資料としてようやく初読。

 フロイト、ユングと並ぶ「心理学の三大巨頭」の一人と目されながら、日本ではあまり知られていないアルフレッド・アドラー。その思想の核心を、対話形式で表現した“アドラー入門”だ。

 著者の一人・岸見一郎は、哲学者・アドラー研究者であり、日本アドラー心理学協会認定カウンセラー。その岸見に、フリーライターの古賀史健が数年越しの取材を重ね、まとめたのが本書である。

 プラトンの「対話篇」を模した、青年と哲人(=岸見の分身)の問答形式。青年が哲人に投げかける疑問の中に、一般読者がアドラー思想に抱きがちな疑問が反映されている。

 当初、アドラーの思想に強い反発を感じ、時には色をなす青年。だが、対話をくり返すなかでしだいに理解を深め、最後にはアドラー思想を心に据えて生き直す決意をする。
 まるで、日蓮の『立正安国論』(客と主人の問答形式で綴られ、最後に客が主人の主張を受け入れる)のようでもある。

 本書の抜きん出た平明さは、半ば以上が古賀史健の手柄だろう。「難解なことをわかりやすく整理してまとめること」こそ、ライターの能力の核なのである。
 古賀が優れたブックライターであることは当ブログでも過去に指摘しているが、このミリオンセラーによって、やっとその力に見合った大ホームランをかっ飛ばしたと言えそうだ。

■関連エントリ
古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』
加藤嘉一『われ日本海の橋とならん』ほか

 本書は、アドラー思想をフィルターとした幸福論でもある。さる2月に発刊された続編はズバリ『幸せになる勇気』だが、本書が『幸せになる勇気』というタイトルであっても、違和感はなかっただろう。
 しかし、かりに第1弾が『幸せになる勇気』だったら、こんなに売れただろうか? あえて『嫌われる勇気』という目を引くタイトルにしたことも、100万部突破の要因の一つだと思う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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