高田かや『カルト村で生まれました。』



 高田かやの『カルト村で生まれました。』(文藝春秋/1080円)を読んだ。

 「ヤマギシ会」(という実名は本には一切出てこないが)の村で生まれ育ち、19歳で村を離れた著者(執筆時35歳)が、子ども時代を振り返って描いたコミックエッセイ。

 ヤマギシ会を離れた人が村での暮らしを振り返った手記は過去にもあったし、同会に取材したノンフィクションも多いが、マンガの形で描かれたのはこれが初めてだろう。

 類書の多くは“ヤマギシ会の実態を告発する”という角度で書かれていたが、本書はまったく告発調ではない。シンプルでやわらかい絵柄の印象もあって、「ほのぼの」という形容詞をつけてもよいタッチで描かれている。“たまたまカルト村で生まれ育った女性が、特異な子ども時代を振り返ったフツーのコミックエッセイ”として読めるのだ。
 その点で、「エホバの証人」元信者の淡々とした自伝『ドアの向こうのカルト』に、スタンスが近い。

 もっとも、ほのぼのタッチながらも内容は強烈で、集団児童虐待としか言いようがないエピソードが頻出する。たとえば――。

・村の食事は1日2食(昼・夜)。そのうえ、「世話係」(子どもたちの世話をする大人。親とは離れて暮らす)に叱られて「食事抜き」の罰を受けることも多かった子ども時代の著者は、日常的にお腹をすかせていた
・子どもたちも大人たちにまじって、農作業などの仕事をさせられた
・テレビの視聴は厳しく制限され、「まんが日本昔ばなし」しか観せてもらえなかった
・お小遣いは一切与えられず、通学路にあるジュースの自販機は「眺めて我慢するもの」だった、など……

 もっとも、その後ヤマギシ会でも、社会からの糾弾などをふまえて規則がゆるくなっているそうで、著者は「私にとっての村の話は昔話だから今どうかは全くわからないよ」と書いている。

 本書に描かれているエピソードは、一般の小学生期に相当する「初等部」時代の思い出が中心。
 著者へのインタビュー記事によれば続編も予定されているそうだから、村を出るまでのくわしい経緯などをぜひ描いてほしいところだ。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
23位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
17位
アクセスランキングを見る>>