杉山春『家族幻想――「ひきこもり」から問う』



 杉山春著『家族幻想――「ひきこもり」から問う』(ちくま新書/864円)読了。

 この著者の本は、同じちくま新書の『ルポ 虐待――大阪二児置き去り死事件』を読んだことがある。これは優れたノンフィクションであったが、本書はとっちらかってまとまりがない印象だ。

 ひきこもりの当事者(本人・親・支援者・医師など)たちを15年も取材してきた結果がこの本では、ちょっと物足りない。版元がつけた惹句には「現代の希望を探しもとめる圧倒的なノンフィクション」とあるが、それほどのものではないと思う。

 本書の最大の欠点は、第三章「私の中のひきこもり」で自分語りを延々とやっているところ。
 著者の息子さんが長い不登校を経験しているそうで、その経緯について書くのはまあいい。
 だが、著者自身の生育歴や、祖父母の代(!)からの杉山家の物語をダラダラと書く必然性が、どこにあったのか? むろん、著者の中では必然性があるからそういう構成にしたのだろうが、私にはその必然性が見えない。

 第三章をすべてカットして、その分ほかの章をふくらませていたら、もっといい本になっただろう。

 ただ、それ以外の章も、私の心にはあまり響かなかった。
 著者は、登場する多様なひきこもり事例の背後に共通項を見出そうとしているのだが、その点に無理があると思うのだ。

 ひきこもりの背後には、「自分に課す規範から自由になれないことがある。その規範が与えられるのは、多くの場合家庭=イエである」と私は書いてきた。



 本書のそのような主張は、ひきこもりの子を持つ親たちを傷つけるのではないか。
 “親の規範・家の規範を子どもに押し付けたから、ひきこもりになったのだ”と、そう言われているように受け止めてしまうのではないか(著者の意図はそこにないにしろ)。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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