佐々木敦『ニッポンの文学』



 昨日は、取材で横浜の神奈川県民ホールへ――。
 中国雑技団の公演「輝け! パンダ・マスター」を観たうえで、出演者にインタビューする仕事である。



 雑技をドラマ仕立てにした面白い試み。パンダが中国一の料理人を目指して修行の旅をする(笑)というストーリーになっている。
 ストーリーはともかく、一つひとつの演技はすごいものであった。肉体の鍛錬の究極を観る思いがした。


 行き帰りの電車で、佐々木敦著『ニッポンの文学』(講談社現代新書/929円)を読了。

 著者が講談社現代新書で刊行してきた『ニッポンの思想』『ニッポンの音楽』の続編。著者は「三部作」と位置づけている。
 私は『ニッポンの音楽』は読んだが、『ニッポンの思想』は現時点で未読である。

 「ニッポンの」と冠されてはいるが、俎上に載るのは1970年代以降の文学であり、「日本文学史」のたぐいではない。

 著者は「あとがき」で、三部作について「私にとって紛れもない個人史の試みであった」と書いている。つまり、自身が少年時代から読んできた本、聴いてきた音楽を、改めて振り返る内容なのだ。
 私は著者と同い年だから、読書経験もかなり重なっており、共感するところが多かった。

 本書は、70年代から現在までの日本文学(といっても、SFやミステリにそれぞれ一章が割かれるなど、扱う範囲は広い)の概説書としては、大変よくできている。

 私小説についての言及が皆無に近い(西村賢太は完全に無視されている)など、著者の好みに合わせて内容が偏ってはいる。が、新書一冊分の限られた紙数で半世紀近い年月を見渡すには、これくらいざっくりしたまとめ方が最適解かな、という気もする。

 ただ、前作『ニッポンの音楽』が批評としても優れていたのに比べ、本書は批評性が薄い印象だ。「こういう小説が売れました・◯◯賞を取りました」などという、たんなる事実の羅列に終わっている部分が目立つのである。
 「やはり、佐々木敦の本領は音楽評論にある」との感を深くした。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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