ベネディクト・キャリー『脳が認める勉強法』



 ベネディクト・キャリー著、花塚恵訳『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!』(ダイヤモンド社/1944円)読了。

 米『ニューヨーク・タイムズ』紙のベテラン科学記者が、第一線の科学者たちへの取材をふまえて、「学習の科学」の最前線を手際よく紹介する本。
 読者に効率的な学習法を教える実用書であると同時に、上質のサイエンス・ノンフィクションでもある。

 「脳科学からみた上手な学習法」をまとめた類書は少なくない。
 たとえば、本書の帯にも推薦の辞を寄せている池谷裕二さんのデビュー作『記憶力を強くする』(講談社ブルーバックス)は、良書であった。また、児玉光雄著『勉強の科学』 (サイエンス・アイ新書)も、イラストをふんだんに用いたティーン向け(受験生向け)の本ながら、大人が読んでもためになる好著だった。

 しかし、「いまから一冊だけその手の本を読みたい」という人には、本書を推したい。
 「こういう学び方をしたら効率的ですよ」とコツを説くだけではなく、「脳のメカニズムから見て、なぜその学び方が効率的なのか?」という機序と、その事実が判明するまでの科学史的背景が詳述されており、読み応えがあるからだ。

 「機序とか背景とか、どうでもいい。オレは効率的な学習法が手っ取り早く知りたいんだ」という人は、コツの部分だけ拾い読みしてもよい。
 ただ、本書の巻末には「学習効果を高める11のQ&A」というまとめページが用意されているのだが、最初にここだけを読んでも言っていることがピンとこなかった。やはり、人間は機序や背景がわかってこそ得心がいくのだ。

 本書で解説されている効果的学習法を、一つだけ紹介しよう(あとは自分で読んでください)。

 「一気に集中して勉強するのと、勉強時間を『分散』するのとでは、覚える量は同じでも、脳にとどまる時間がずっと長くなる」という。このことは、研究者の間で「分散学習」「分散効果」と呼ばれている。
 つまり、何かを学ぶための時間が週に4時間割けるとしたら、一気に4時間学ぶより、2時間ずつ2回学んだほうが、脳への定着率が高いのだ。

 しかも、毎日勉強するより、何日か間隔をあけて2回学んだほうが効果的だという。
 一夜漬けの詰め込み学習にもそれなりの効果はあるが、ほとんど記憶に定着せず、しばらくすると学んだことの大半を忘れてしまうという。これも、学生時代を考えれば誰しも思い当たるだろう。

 ……と、そのような学習テクニックが、機序と背景も含めてくわしく解説されている。
 後半にはひらめきを生むメカニズムに迫った章もあるし、学生ならずとも一読の価値がある。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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