キース・エマーソンほか『スリー・フェイツ・プロジェクト』



 キース・エマーソンの訃報に、自分でも意外なほどショックを受けた。
 病気で指が思うように動かなくなったことに悩んで(パートナーの川口真里さんの証言による)の拳銃自殺という最期が衝撃的だったせいか、デヴィッド・ボウイの訃報からまだ日が浅いせいか……。

 ELP(エマーソン、レイク&パーマー)は少年時代に大好きだったバンドだが、近年のキースの活動にはあまり興味が向かなかった私。
 しかし、訃報に接してから手元にあるELPのアルバムを聴きまくり、キースの最近作『スリー・フェイツ・プロジェクト』(2012年)と『キース・エマーソン・バンド・フィーチャリング・マーク・ボニーラ』(2008年)を、追悼の意味で入手した。

■ELPについての過去エントリ
『The Essential Emerson, Lake & Palmer』
エマーソン、レイク&パーマー『ELP四部作』

 で、まずは『スリー・フェイツ・プロジェクト』を聴いているのだが、これは素晴らしい!
 キースとマーク・ボニーラ(キース・エマーソン・バンドのギタリスト兼ボーカリスト)、そしてノルウェー人指揮者テリエ・ミケルセンの3人によるプロジェクト。ミュンヘン放送管弦楽団との共演により、ELPの音よりもぐっとクラシック寄りの内容になっている。

 とはいえ、プロジェクト名はELPの曲「運命の三人の女神(The Three Fates)」に由来するし、アルバム中でも「タルカス」「永遠の謎」「奈落のボレロ」といったELPの名曲をオーケストラ・アレンジで取り上げている。
 「タルカス」をオーケストラで演る試みとしては、吉松隆編曲の『タルカス~クラシック meets ロック』(2010年)などもあったが、こちらは作曲者自らのアレンジであり、さすがのカッコよさ。

 私は『ELP四部作』に入っていたキースの“もろクラシック”な曲「ピアノ協奏曲第1番」が大好きなのだが、このアルバムはあの曲に近い雰囲気――クラシカルなアレンジの中にも、ロック的なダイナミズムとスピード感がある――で全編が統一されている印象だ。
 ただし、ディストーションの効いたギターがうなりを上げるなど、随所にロック的要素があり、「ピアノ協奏曲第1番」ほど“もろクラシック”ではない。

 パワフルなのに詩情豊かで美しく、ワイルドなのに細部は緻密に構築されていて、キース・エマーソンらしさが全編に横溢するアルバム。
 こんなにも生命力あふれる音楽を創っていたキースが、自ら命を絶ってしまうとは……。R.I.P.

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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