稚野鳥子『月と指先の間』



 稚野鳥子(ちや・とりこ)の『月と指先の間』(KCデラックス Kiss)の1巻を、kindle電子書籍で購入。

 月刊『Kiss』連載中で、まだ1巻が出たばかりの作品(→ここで第1話が試し読みできる)。
 守備範囲外の雑誌だからまったく知らなかった作品だが、ネット上での評判で興味を抱いた。

 なんと、55歳の独身ベテラン少女マンガ家が主人公である(絵はとても55歳に見えないが、いわゆる「美魔女」という設定なのだろう)。
 1巻の展開からして、主人公が作品を連載しているマンガ誌の、10歳年下の独身編集長との恋愛がストーリーの軸になっていくようだ。

 大人のラブストーリーとしても楽しめるが、それ以上に、マンガ家の暮らしぶり・仕事ぶりのリアルで赤裸々な描写が面白い! かつての『編集王』などよりも、さらにリアルだ。

 しかもそれは、マンガ誌もコミックスも売れなくなった「いまどきのマンガ界」の厳しい状況を、そっくりそのまま反映した生々しさなのだ。
 たとえば、主人公・御堂アンの、次のようなモノローグ――。

 かつて少女漫画が一番売れていた頃
 私の重版と初版の収入はほぼ同じくらいだった
 今は重版はほとんど無い…



 うーん、生々しい。

 あたりまえだが、マンガ界も出版業界の一部である。ゆえに、出版業界の片隅に身を置く50代フリーライターである私としては、アンのセリフやモノローグにいちいち共感してしまうのだ。
 そもそも、この作品に出てくる「マンガ界あるある話」の多くは、そのまま「出版業界あるある話」だし(私も最近、仕事で書いた本の重版はほとんどない)。

 読者に夢を売る恋愛マンガを描きながら、まったく「ドリームブレイカー」な少女マンガ家の日常。それを赤裸々に描きながら、なおかつ「大人のラブストーリー」として成立させてしまうあたり、作者の力技がスゴイ。

 オッサンの私にはさすがに『Kiss』は恥ずかしくて買えないが、今後コミックスを買いつづけることに決めた。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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