野村進『救急精神病棟』



 昨日は冷たい雨のなか、私用で巣鴨へ――。
 行き帰りの電車で、野村進著『救急精神病棟』(講談社文庫/905円)を読了。

 日本初の精神科救急医療機関となった「千葉県精神科救急センター(現・千葉県精神科医療センター)」に取材したノンフィクション。仕事の資料として読んだのだが、面白くて一気読み。

 野村進は優れたノンフィクション作家であり、その取材作法を明かした『調べる技術・書く技術』は、取材記事を書く者のバイブルといってもよい名著だ。本書は、その野村が3年越しの密着取材を行って書いたものだけに、内容が非常に濃い。

 精神科救急という過酷な現場で働く医師・看護師たちの息遣いが、ヴィヴィッドに伝わってくる。そして、背後にある日本の精神科医療の歴史や問題点にまで迫る奥深さを具えている。

 野村は近年、石井光太のノンフィクションに厳しい批判を投げかけてきたことでも知られる。“石井のノンフィクションには作り話が含まれているのではないか”という主旨の批判だが、その当否は私には判断しかねる。
 ただ、本書を読んで、背景には両者のノンフィクション作法の根本的な相違があるのだと感じた。

 石井光太のノンフィクションには、センセーショナリズムすれすれの危うさがつねにある。人目を引くドギツイ場面をことさら強調して描く「癖」があるのだ。
 対照的に、野村進はそういう危うさから遠い。本書もしかり。精神科救急という、いくらでもドギツイ場面を連ねられそうな舞台を選びながら、筆致はむしろ静謐で落ち着いているのだ。

■関連エントリ→ 野村進『千年、働いてきました』

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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