カレー沢薫『負ける技術』



 カレー沢薫著『負ける技術』(講談社文庫/734円)読了。マンガ家兼コラムニストの著者の、現時点で唯一のコラム集である。

 年季の入った非リア充・非モテ・負け組としての立ち位置から、自らの「イケてなさ」を自虐の笑いにくるみ、リア充たちを呪詛しつづけるコラムが、136本も詰め込まれている。しかも、その一本一本に著者の一コマ・マンガが添えられており、読み終えると深い満腹感が味わえる。

 本書にも綴られているとおり、著者は既婚者であり、あまつさえ注文住宅で自分の家も建てたという。「その時点でリア充であり、勝ち組ではないか」と、「看板に偽りあり」感を抱く向きもあろう。

 そのへんについては、著者が別の連載コラムで思うところを綴った一文「『結婚すればリア充』なのか?  非リア充/リア充の境界線」があるので、読んでみるとよい。
(かくいう私も既婚者ではあるが、そのことで自分がリア充・勝ち組だなどと思ったことは一度たりともない。非リア充・非モテ・負け組が盤石の自己規定である。なので、カレー沢薫の気持ちはよくわかる)

 「マイナビニュース」連載中の「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」には、文章の不自然なところや言葉の誤用が散見される(誤/さんさんたる→ 正/さんたんたる……など)。本書にはそれがなく、スッキリとよくまとまっている。
 おそらく、講談社の優秀な編集者が的確にダメ出しをして修正させているのだろう(「マイナビニュース」の編集者が優秀でないというわけではないが)。

 それはともかく、最近売れっ子の女性コラムニストたちの著作と比べても遜色ない、ウェルメイドなコラム集である。微苦笑を誘う絶妙な比喩や、鋭いアイロニーの刃でリア充をバッサリと斬るキラーフレーズなどが満載だ。

 カレー沢薫は面白い文章を書くし、かりにマンガが売れなくなっても、コラムニストとしてやっていけると思う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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