中村淳彦『女子大生風俗嬢』



 中村淳彦著『女子大生風俗嬢――若者貧困大国・日本のリアル』(朝日新書/821円)読了。

 同じ著者の『日本の風俗嬢』『職業としてのAV女優』の姉妹編ともいうべき本である。

 「女子大生の風俗嬢が増え始めた」ことが新奇な現象として報じられたのは1980年代だが(それ以前にも例外的な女子大生風俗嬢はいただろうが)、当時の女子大生風俗嬢はおおむね「遊ぶ金欲しさ」でなるケースが多かったと思う。

 しかし本書によれば、昨今は生活費と学費捻出のために風俗をするケースが多いのだという。つまりこれは、「若者の貧困」の問題を女子大生風俗嬢というフィルターを通して考えた本なのだ。

 著者は、風俗・AVライターとして長年活動してきた人。『日本の風俗嬢』『職業としてのAV女優』は、その経験と知識が凝縮されていた点がよかった。

 いっぽう、本書は行き当たりばったりの浅い取材で書かれている印象で、前2著に比べて読み応えがない。
 たとえば、第3章「貧困の沖縄を行く」は「2泊3日の取材」(本文にそう明記されている)で書かれている。2泊3日で何人かの風俗嬢を取材しただけで“沖縄のいま”を語られてもなあ。

 また、第5章「風俗はセーフティネットか」に登場するのは、45歳と30代の熟女風俗嬢と、20歳だが大学生ではないデリヘル嬢だけだ。おいおい、これは『女子大生風俗嬢』という本ではなかったのか。

 大学進学率が50%を超える状況だが、旬な適正年齢で、最高学府に進学するような女性は、なかなかそこまで転落しない。山根氏から、“うちで一人だけ20歳の女の子がいます。学生ではないですけど、取材しますか?”と言われた。


 
 ……って、本のテーマとタイトルを著者自身が否定しちゃってるし(笑)。女子大生風俗嬢の事例が、思ったほど簡単には見つからなかったのだろう。

 まあ、“大学の学費高騰とそれに伴う奨学金(という名の借金)問題の深刻化によって、女子大生風俗嬢にならざるを得ない人が増えている”という本書の問題提起自体は、社会的意義のあるものだと思う。

「今は学生の半分以上が一般的なサラリーマンの年収以上の借金を背負っている。90年代後半あたりまで、奨学金の受給者は大学生全体の2割程度だったけど、今は52・5%となって少数派ではなくなってしまいました」(大内裕和・中京大教授のコメントより)



 過去の著作でも感じたことだが、この著者には、ごく一部の極端な事例を根拠に“社会全体が極端になっている!”と針小棒大に書き立てる悪癖がある。
 たとえば、『崩壊する介護現場』では、“介護業界で働く女性の多くが副業で性風俗をやっている”かのような書き方をしていた。
 
 本書にも、「この数年、世代格差が叫ばれている。高齢者は様々な社会保障で悠々自適に暮らし、その孫はカラダを売って大学進学する、そんな現実がある」(「おわりに」)という一節がある。
 いやいや、そんな書き方ができるほど一般化した現象ではあるまい。“風俗の仕事で学費を捻出する学生も、世の中にはいる”というだけの話だろう。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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