葉室麟『はだれ雪』



 昨日は、企業取材で千葉県木更津へ――。
 木更津で降りたのはたぶん20年ぶりくらい。『木更津キャッツアイ』以前だ。
 『木更津キャッツアイ』の影響で木更津もすっかり洗練され……てはいなかった。木更津は相変わらず木更津だった。でも、港町独特の雰囲気、私は好きである。


 行き帰りの電車で、葉室麟著『はだれ雪』(角川書店/1944円)を読了。著者インタビューのため。

 この新作は、葉室流『忠臣蔵』である。
 しかも、主人公は女性で、メインとなるのは清冽な大人のラブストーリー。その背景に、おなじみの『忠臣蔵』の物語がからんでゆく。

 吉良上野介に斬りつけた浅野内匠頭に、事件直後に近づき、襖越しにその「最期の言葉」を聞いたとされる旗本・永井勘解由(かげゆ)。役目を超えたその勝手な行いは将軍綱吉の怒りを買い、勘解由は流人として扇野藩(架空の藩)の屋敷に幽閉の身となる。

 勘解由が誰にも明かさなかったという内匠頭の「最後の言葉」とは、どのようなものだったのか? なぜ、勘解由は危険を冒して内匠頭と言葉を交わそうとしたのか? そのミステリーがストーリーを牽引していく。

 勘解由の接待役兼監視役を藩から命じられ、共に暮らすことになるのが、若く美しい後家・紗英(さえ)。身の回りの世話をし、その高潔な人格に触れるうち、しだいに勘解由に心惹かれていく。

 だが、浅野家旧臣たちの間では少しずつ主君の仇討ちへの機運が高まり、内匠頭の「最期の言葉」を知ろうと勘解由に接近する者も出てくる。大石内蔵助、堀部安兵衛といったおなじみの面々も登場し、読者に強烈な印象を残す。

 仇討ちがなされたなら、勘解由もそれを使嗾したとして、身に災いがふりかかることもあり得る。果たして、勘解由と紗英の恋の行く末は――?

 ……と、いうような話。「ううむ、その手があったか!」と唸らされる、斬新な切り口の『忠臣蔵』アナザーストーリーである。面白くて一気読み。とくに紗英のヒロイン像がすこぶる魅力的だ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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