鈴木大介『老人喰い』



 鈴木大介著『老人喰い――高齢者を狙う詐欺の正体』(ちくま新書/864円)読了。

 鈴木大介は、ほかの誰も手をつけない分野で、社会的意義の高いルポを書きつづけている。
 それでもいまだ賞に縁がなく「無冠」であるのは、取材テーマが「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」というキワドイものであるためだろうか。

 本書は、いわゆる「オレオレ詐欺」の現場を、当事者たちへのディープな取材から活写したもの。

 鈴木の『家のない少年たち』(『モーニング』連載中の劇画『ギャングース』の原案に当たる)をレビューしたとき、私は、「『犯罪を礼賛する気はさらさらない』と著者は『まえがき』で言うのだが、それでも犯罪をどこか肯定的に描いている印象を随所で受ける」と書いた。
 本書にも、同様の危うさを感じた。オレオレ詐欺の加害者たちを、“老人ばかりが豊かで、若者たちが貧しい格差社会への反逆者”として捉えているからだ。

 ただし、そういう危うさを差し引いてみれば、鈴木にしか書けないド迫力の犯罪ルポではある。

 オレオレ詐欺グループが、ヘタな中小企業など足元にも及ばないほど、高度に合理化・組織化されている様子に唖然とする。
 「オレオレ詐欺なんて、ダマされるヤツが馬鹿なんだ」というのは、高度化した現在のオレオレ詐欺には当てはまらない言葉だ。いまは、カネをもっている高齢者にあらかじめ狙いを定め、相手の個人情報を調べ上げて臨むやり方が増えているのだという。

 逮捕されるリスクが大きいのは、実際にカネを受け取る役の人間のみ。詐欺の主体である「店舗」で働く「プレイヤー」たちは、二重三重の安全装置に保護されて、ほとんど逮捕に至らないという。

 その「プレイヤー」たちを新たに育成する「研修」の場で、「講師」役は次のように嘯く。

「日本の老人は、世界中で最も金持ちで、最もケチな人種だ。若い人間が食えなくてヒイヒイ言ってる中で、金もってふんぞり返ってるこいつらから、たった200万程度を奪うことに、俺は一切の罪悪感を感じない。むしろ俺はこの仕事を誇りに思ってるよ」



 ……このような洗脳教育を経て、なんの罪悪感も感じず詐欺に手を染める「プレイヤー」が育成されていくのである。

■関連エントリ
鈴木大介『最貧困女子』
鈴木大介『家のない少年たち』
鈴木大介『出会い系のシングルマザーたち』
鈴木大介『家のない少女たち』

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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