田亀源五郎『弟の夫』



 田亀源五郎の『弟の夫』(アクション・コミックス)1巻を読んだ。仕事の資料として。
 海外でも人気の高いゲイ・エロティック・アーティストの著者が、初めて一般コミック誌(『月刊アクション』)に連載中の作品。

 ゲイの世界を描いたマンガは、これまでにもたくさんあった。
 山上たつひこの「至上の愛」(『喜劇新思想大系』の一編)あたりが嚆矢なのだろうが、その後は少女マンガの世界でさまざまな形で描かれてきたし(吉田秋生の『カリフォルニア物語』のゲイたちとか)、「BL」も広い意味ではゲイ・マンガといえる。

 しかし、自らもゲイである作者が、ゲイではない読者が大半の一般コミック誌にゲイのマンガを描くのは、本作が初だろう。その意味で、これは日本マンガ史の期を画す作品である。

 主人公・弥一(やいち)の双子の弟がカナダで客死し、翌月、「弟の夫」マイクがカナダから日本にやってくる(カナダは同性婚が合法の国であり、外国人も同性パートナーと結婚できる)。

 マイクは日本滞在中、弥一と娘の夏菜(カナ)が2人で暮らす家に住むことになる。
 弥一はノンケ(=ゲイではない)であり、マイクにどう接したらよいかわからない。
 戸惑いばかりの共同生活の中で、弥一はマイクを通じて、少しずつゲイに対する理解を深めていく。

 ……と、いうような話。
 ていねいかつスッキリとした絵が素晴らしい。また、ゲイに関する基礎知識などが、あからさまな啓発臭を漂わせることなく、ストーリーの中に自然な形で織り込まれている点も好ましい。

 ただ、私が本作の欠点だと思ったのは、主人公の娘・夏菜の描き方である。

 夏菜は小学校低学年という設定だと思うが、その年頃の女の子が、突然外国からやってきた見知らぬオッサンを、きたその日から家族の一員としてすんなり受け入れるなんて、あり得ないだろう。
 べつに「男と男が結婚するなんて、キモーイ!」とか言わなくてもいいけれど(それはそれで紋切型だし)、少しは戸惑いとか葛藤があってしかるべきではないか。
 本作でマイクの登場に戸惑うのは弥一のみであり、夏菜はまったく戸惑わない。そこにリアリティの欠如を感じる。

 弥一とマイクの人物像には十分にリアリティがあるのに、夏菜だけが「絵空事のキャラ」という印象を受けてしまうのだ。
 これからのストーリーの中で、そのへんの不自然さが払拭されていくことを願う。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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