牧村康正・山田哲久『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』



 牧村康正・山田哲久著『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』(講談社/1620円)読了。

 私世代にはなじみ深い名前――『宇宙戦艦ヤマト』のプロデューサーにして「生みの親」・西崎義展(よしのぶ)の生涯をたどったノンフィクション。
 共著だが、執筆・構成は牧村によるもの。西崎のアシスタント・プロデューサーであった山田は、いわば“筆頭証言者”としての役割だ。
 山田以外にも多くの関係者に取材して書かれた力作ノンフィクションであり、「ヤマト世代」には面白い本。

 何より、西崎の人物像が強烈で、それが読者を引っ張る駆動力となる。
 傲岸不遜で見栄っ張り。大ぼら吹きの山師。金にルーズ。自分の会社の社員たちに対しては朝令暮改の独裁者。儲けた端から湯水のように散財し、取っ替え引っ替えの愛人を平然と自分の秘書にする。

 それでいて、プロデューサーとしての力量は天性のもの。金持ちを口説いてカネを調達する能力とか、大企業の偉いさんを口説いて企画を通す能力などが抜きん出ているのだ。

 こんな人間が身近にいたらたまらんだろうな、と思う反面、映画界の独立プロデューサーはこういう人でなければ成功できないのだろうな、とも思う。
 カリスマの複雑な人間像を鮮やかに描き出す一冊であり、「狂気」と冠されたタイトルとは裏腹に、著者たちの西崎へのリスペクトも感じ取れる。

「なにもか嘘だらけの西崎さんですが、『ヤマト』への愛情だけは本物だったのでしょう」

 
 ――これは、西崎の秘書を務めた女性(愛人ではない、ホントの秘書)のコメント。通読して、私も同じ感慨を抱いた。

 西崎と、あの山崎正友との深い関係についても言及されている。山崎の「シーホース事件」に巻き込まれたことが、西崎の破滅の契機になるのだ。
 本書に描かれた西崎の行動には山崎とよく似たところがあり、2人のウマが合ったというのも納得がいく。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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