宮下奈都『スコーレ№4』



 今日は、文藝春秋本社で小説家の宮下奈都さんを取材。
 宮下さんは「顔文一致」というか、小説のイメージそのままの清楚で素敵な奥様であった。

 もう一冊、旧作『スコーレ№4』(光文社文庫)を読んで臨む。
 2007年に書かれた代表作の一つで、ヒロインの少女時代から、成人して生涯の伴侶に巡り合うまでが4部作形式で描かれる。「スコーレ」とは学校のこと。中学・高校・大学・就職先という4つの「学校」に出合って、ヒロインが少しずつ成長していくプロセスを丹念に追っていく。

 これも素晴らしい作品だ。4部作を読み進めるうち、ヒロイン・津川麻子が現実の友人(ないしは友人の娘さん)のように思えてきて、彼女の人生を応援したくなってくる。

 少女時代が描かれた「№1」「№2」には恋愛小説としての色合いが濃く、それぞれ清冽で美しい恋愛小説になっている。また、就職後の悪戦苦闘が描かれた「№3」は、何よりもまず「仕事小説」だ。

 よい文章がたくさんある。たとえば、ヒロインの中学時代が描かれた「№1」の、次のような一節。

 もうすぐ一学期が終わるというのに、中学校には慣れることができない。あっちも嘘、こっちにも嘘。全然ほんとうの匂いがしない。息を吸っても吸っても肺の底まで酸素が届かない感じがする。学校にいる間、だから私は息をひそめて不機嫌をなだめている。学校では何かが起きそうなのに、実際には何も起こらない。いいことも、悪いことも、どかどかやってくるくせに、あちこち踏み荒らしてあっという間に通り過ぎていく。後には何も残らない。通り過ぎるまでは、おへそに力を込め、脇をしっかり締める。これで防御の体勢だ。振りかかる火の粉も、うろつく感情の波も、皮膚の内側まで入り込むようなことはない。



 これはまあ、思春期特有の自意識過剰――身もフタもなく言えば「中二病」的心理状態の描写であるわけだが、「中二病」をこんなに繊細な文章で表現できることが素晴らしい。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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