宮下奈都『羊と鋼の森』



 宮下奈都(なつ)著『羊と鋼の森』(文藝春秋/1620円)読了。著者インタビューのため。

 調律師になりたての青年を主人公にした、一種の「ビルドゥングス・ロマン」である。当然「音楽小説」でもあるし、ある種の「青春小説」でもある。

 元々音楽に造詣の深い作家である著者だが、それに加え、調律師の人たちに丹念な取材をして執筆に臨んでいるようだ。
 調律師の目から見た音楽の世界がリアルに描かれ、すこぶる新鮮。こんな形の音楽小説があったのかと、意表をつかれる思いがする(熊谷達也にも『調律師』という小説があるが)。

 何より、静謐な印象の小説である。色恋沙汰も一切ないし、登場人物が声を荒げるような場面もない。新米調律師が、小さな挫折や失敗をくり返しながらも、一人前になっていく成長のプロセスが、慈しむような筆致で描かれていく。

 クラシック音楽の好きな人、とくにピアノが弾ける人ならいっそう深く味わえるだろうが、そうでなくても十分に楽しめる。
 これは狭義には音楽小説だが、プロフェッショナルが仕事に向かう姿勢を描いた仕事小説でもある。読者はそれぞれ自分の仕事に引き寄せて、主人公の成長過程を見ることができるのだ。
 「仕事の中の喜びとは何か?」を、読者に問いかける小説といってもよい。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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