クリストファー・マクドゥーガル『ナチュラル・ボーン・ヒーローズ』



 昨日は、今年のノーベル物理学賞に輝いた梶田隆章・東大宇宙線研究所長を取材。東大柏キャンパスにて。

 昨年のいまごろ、やはりノーベル物理学賞を受賞した天野浩さん(名古屋大学教授)を取材したから、2年連続でノーベル賞受賞者を取材したことになる。サイエンス・ライターならあたりまえだが、そうではない私にとっては奇遇だ。

 梶田さんは、一つひとつの質問を丁寧に考えて答えてくださる、物腰柔らかな紳士であった。


 クリストファー・マクドゥーガル著、『ナチュラル・ボーン・ヒーローズ――人類が失った"野生"のスキルをめぐる冒険』(NHK出版/2160円)読了。書評用読書。

 第2次大戦中、ギリシャのクレタ島でくり広げられた対独レジスタンス。そのクライマックスとなった、ドイツ軍将軍の誘拐作戦を描いたノンフィクション。

 ……ではあるのだが、それは本書の半面にすぎない。
 もう半面は、誘拐作戦を成功させたクレタ島の若者たちの驚異的な戦い(夜を徹して山岳地帯を80キロ以上走りつづけるなど)の秘密に迫ることにある。クレタ島に伝えられてきた特殊な走法(クレタ走り)と、島民の独特な食生活の中にその秘密があった、というのが著者の見立てだ。

 誘拐作戦の顛末を追った部分と、クレタの若者たちのパワーの源を探っていく部分が、交互に登場する。
 つまりこれは、歴史ノンフィクションであると同時に、フィットネス――現代人が「野生のスキル」を取り戻すためのフィットネス――の本でもあるのだ。

 そのうち、フィットネスの書としての面は、目からウロコの指摘が多く、面白く読んだ。
 しかし、ノンフィクションとしてはイマイチ。てゆーか、さっぱり面白くなかった。話があちこちに飛ぶ雑然とした構成で、本の中に入り込めなかった。この著者には物語を紡ぐ才能がないと思う(ノンフィクションであってもその才は必要だ)。

 本書は、誘拐作戦の顛末は遠景にとどめ、テーマをフィットネスに絞るべきだった。「二兎を追う者は一兎をも得ず」である。

 ところで、本書の帯の惹句はなかなかトリッキーだ。
 「世界300万部のベストセラー」と大書されているので、本書が300万部も売れたのかと思わせるが、よく見ると、「世界300万部のベストセラー『BORN TO RUN』に続く最新作!」と書いてある。東スポの見出しかよ(笑)。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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