木村俊介『漫画編集者』



 木村俊介著『漫画編集者』(フィルムアート社/1944円)読了。

 インタビュアー(肩書としてこの言葉を用いているライターは、吉田豪とこの著者くらいだろう)の著者が、5人のマンガ編集者に対して行ったロングインタビューをまとめたもの。

 登場するのは、猪飼幹太(『コミックリュウ』)、三浦敏宏(『ヤングマガジン』)、山内菜緒子(『ビッグコミックスピリッツ』)、熊剛(『Gファンタジー』)、江上英樹(元『IKKI」』編集長)といった面々。

 このうち、「有名編集者」と言えるのは江上英樹くらいか。
 これまでにあったマンガ編集者についての本というと、「手塚番」を務めたベテランとか、元『少年ジャンプ』編集長がジャンプ黄金時代を語る本とか、すでに一線をしりぞいた人の回顧録が多かった。

 さして有名でない、第一線で仕事をしている編集者たちが登場するところが、本書の大きな特徴といえる。
 マンガ好きなら、まあ興味深く読める本ではある。

 ただし、あまり面白い本ではない。そもそも、一人ひとりについてこんなにページを割く必要があったのだろうか。

 たとえば、猪飼幹太へのインタビューでは、彼がマンガ編集者になるまでの出来事に、半分くらいが割かれている。
 「高校を出て、いったん郵便局に就職した」とか、マンガ好きが昂じて『ぱふ』(マンガ情報誌)の編集部に入ったとか、どうでもいい話が延々とつづいてウンザリ。
 
 こういうどうでもいい部分はバッサリ削って、マンガ編集者としての仕事の話に絞り、20人くらいの編集者へのインタビューを集めればよかったのに……。

 本書でいちばん面白く読めたのは、江上英樹へのインタビュー。
 それは、松本大洋や土田世紀、江川達也など、彼が担当してきた作家たちとのかかわりのエピソードの面白さであり、すでにない名誌『IKKI』の舞台裏を垣間見る面白さでもある。

 ほかの4人のインタビューも部分的には面白いのだが、全体的に内容が薄い。
 以前に取り上げた、小説仕立てでマンガ編集者の仕事を描いた関純二の『担当の夜』のほうが、マンガ編集者の仕事を知るためには役立つように思う。

■関連エントリ→ 木村俊介『物語論』

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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