グレッグ・マキューン『エッセンシャル思考』

エッセンシャル思考

エッセンシャル思考
著者:グレッグ・マキューン
価格:1,728円(税込、送料込)
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 グレッグ・マキューン著、高橋璃子訳『エッセンシャル思考――最少の時間で成果を最大にする』(かんき出版/1728円)読了。

 時間管理術の本のようなタイトルだが、実際には違う。また、広い意味で仕事術の本ではあるが、いわゆる「ライフハック」の本ではない。
 押し寄せる仕事の山から、重要で有意義な仕事だけを選び、そこに集中するための心構えが中核に据えられた内容だ。ゆえに原題が「Essentialism」。“仕事の断捨離”の本と言ってもよい。

 瑣末でどうでもよい大半の仕事は上手に断り、ごく少数の重要な仕事に集中せよ。結果的にはそのほうが成果が上がり、あなたの評価も上がる。何より、あなたの人生もそのほうが充実し、幸福感を感じられるようになる……おおむねそのような主張が、さまざまな角度から語られている。

 ビジネスパーソン一般を対象とした本ではあるが、私のようなフリーランサーにはとくに耳の痛い指摘に満ちている。そもそも、フリーは仕事を断ることに本能的恐怖を覚えるものであり(断ったら次がないことが多いし、仕事がないつらさが身にしみているから)、多少スケジュール的に無理でもつい受けてしまうものだからだ。

 本書では全編にわたって、「エッセンシャル思考」と「非エッセンシャル思考」が比較されていく。

 たとえば、エッセンシャル思考の人は「やることを計画的に減らす」のに対し、非エッセンシャル思考の人は「やることをでたらめに増やす」という具合だ。

 随所で指摘される「非エッセンシャル思考」の特徴(ダメさ加減)が、まるで私のことを言われているようで、読んでいてグサグサ刺さる(笑)。
 たとえば、「差し迫ったものからやる」「反射的に『やります』と言う」「期限が迫ると根性でがんばる」という仕事ぶり。その結果、「何もかもが中途半端」「振り回されている」「疲れきっている」が常態になっている……というところなど。

 著者の主張は、どれもご説ごもっとも。ただ、要は理想論であり、よほど恵まれた人でなければ見習えないやり方だと思う。
 私が村上春樹であったなら、押し寄せるオファーの中からいちばん重要な仕事だけを選び、優雅で充実した毎日が送れるだろう。
 しかし、私のようなしがない「ライターさん」の場合、「やりたい仕事だけを受け、あとは断る」なんてことをしたら、早晩(半年も経たないうちに)すべての仕事を失って路頭に迷うだろう。
 会社員もしかり。やりたい仕事だけ選べる会社員なんて、どこにいるというのだ?

 ……と、そのように反発を覚える面もあるが、それはそれとして、うなずける主張も多い。
 たとえば、“生産性を上げるためには、何も予定を入れずにただ「考える時間」を確保することが大切”との主張。

 仕事が忙しくなればなるほど、考える時間を確保することがより必要になる。生活がノイズに満ちてくればくるほど、静かに集中できるスペースがより必要になってくる。(中略) 
 たとえばLinkedIn(リンクトイン)のジェフ・ワイナーCEOは、毎日合計2時間の空白をスケジュールに組み込んでいる。その時間には予定を何も入れない。相次ぐミーティングに振り回され、まわりが見えなくなるのを防ぐためだ。最初はさぼっているような気分になったが、実践してみると生産性が確実にアップした。自分のための時間を確保することで、人生の主導権を取り戻せたと彼は言う。



 目の前の〆切に振り回されてばかりいる、典型的「非エッセンシャル思考」の私は、本書に大いに啓発された。
 自己啓発書的な薄っぺらさよりも、むしろ哲学書を思わせる深みがある好著。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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