ヘドリック・スミス『誰がアメリカンドリームを奪ったのか?』



 ヘドリック・スミス著、伏見威蕃訳『誰がアメリカンドリームを奪ったのか?』(朝日新聞出版/上下巻・各2160円)読了。書評用読書。

 『ロシア人』『パワーゲーム』などの作品で知られるピュリッツァー賞作家が、綿密な取材に基いて米国社会の暗部をえぐる長編ノンフィクション。

 かつて(1950~70年代あたりまで)のアメリカは世界一豊かで分厚いミドルクラス(中間層)を擁する国であり、そのミドルクラスこそがいわば“アメリカンドリームの分母”であった。

 本書にいう「アメリカンドリーム」とは、飛び抜けた成功を収めて大金持ちになることを指すものではない。ふつうの人が不自由のない暮らしをして自分の家を持つといった、ごくありきたりでささやかな夢の謂なのだ。
 だが、アメリカのミドルクラスは急速にやせ衰え、貧困層に転落し始めているという。上位1%ほどの新・富裕層が過剰に肥え太り、恐るべき富の偏在が進んできたためである。2010年には、上位1%の富裕層が国の経済収益の93%を手に入れたという。

 かくして、アメリカンドリームは大部分の人の手から奪われてしまった。なぜそんなことになってしまったのかを、著者はさまざまな角度から丹念に検証していく。

 米国で資本主義が爛熟を極め、腐り果てていくまでの何十年かのプロセスを、すごい迫力で描き尽くした力作。終盤には、格差是正のための著者の提案も書かれている。

 内容とは関係ないのだが、この本は本文部分の紙質が悪い。藁半紙に近い感じのヘナヘナした紙が使われているのだ(匂いも藁半紙みたい)。上下巻合わせて4000円以上する本なのに、この紙質はちょっとないよなァ、と思った。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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