池内恵『イスラーム国の衝撃』



 昨日は取材で京都へ――。
 新幹線の中で、池内恵(さとし)著『イスラーム国の衝撃』(文春新書/842円)を読了。
 
 前に読んだ『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』(ロレッタ・ナポリオー二著)と同じく、IS(イスラム国)の一般向け概説書である。

 ISについての誤解や先入見が突き崩されていくくだりが随所にあり、蒙を啓かれた。たとえば――。

 日本ではしばしば根拠なく、ジハード主義的な過激思想と運動は、「貧困が原因だ」とする「被害者」説と、その反対に「人殺しをしたい粗暴なドロップアウト組の集まりだ」とする「ならず者」説が発せられる。相容れないはずの両論を混在させた議論も多い。西欧諸国からの参加者のみを取り上げて、「欧米での差別・偏見が原因」と短絡的に結論づけ、「欧米」に責を帰して自足する議論も多い。
 本書で解明してきたグローバル・ジハードという現象の性質を理解すれば、単に「逸脱した特殊な集団」や「犯罪集団」と捉えることは、問題の矮小化であると分かるだろう。



 また、ISの資金源についての考察にも唸った。「世界で最も富裕なテロ組織」と呼ばれるISだが、それはいくつもの誤解に基づく過大評価の面がある、というのだ。

 サウジアラビアが資金源という説は、イスラーム系武装勢力一般に流れる資金と「イスラーム国」の資金を混同しており、シリアやイランやロシアによる意図的なプロパガンダの影響を露骨に受けている。サウジアラビア政府の資金が直接「イスラーム国」に供与されているとは考えにくく、あったとすれば、ジハードを支援する宗教寄進財団を経由した個人の寄付だろう。



 ……というふうに、巷間ささやかれる「資金源」説を一つひとつ否定し、実態を明らかにしていく手際が鮮やかだ。

■関連エントリ→ 池内恵『イスラーム世界の論じ方』レビュー

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
18位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
15位
アクセスランキングを見る>>