一ノ関圭『鼻紙写楽』


鼻紙写楽 (ビッグコミックススペシャル)鼻紙写楽 (ビッグコミックススペシャル)
(2015/03/20)
一ノ関 圭

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 一ノ関圭の『鼻紙写楽』(ビッグコミックススペシャル/1944円)を購入。

 伝説のマンガ家の、じつに四半世紀ぶりの新刊だ。
 デビューから40年経つというのに、これまでに刊行された彼女の作品集は、本書を含めてたったの3冊。並外れた寡作なのだ。それでも、「らんぷの下」や『茶箱広重』といった代表作は、マンガ史に残る傑作として語り継がれている。

 江戸中期を舞台に、歌舞伎と浮世絵の世界を二つながら描き尽くした、絢爛たる物語。堪能した。『茶箱広重』をもしのぐ大傑作だと思う。

 一ノ関圭は藝大油絵科卒で、「日本でいちばん絵のうまいマンガ家」の最有力候補。その圧倒的な画力・画面構成力は、本作でも健在だ。今後、何度も読み返し、1ページ1ページを味わい直す本になるだろう。

 約2000円という価格はコミックスとしては高いようだが、A5判434ページのボリュームなので、手に取って読んでみればむしろ「安い」と感じる。

 重厚な人間ドラマとしても、芸術の世界の深淵を描いた物語としても、綿密な下調べに基づく江戸風俗絵巻としても、それぞれ申し分のない完成度。
 そのうえ、江戸で起きた幼女連続殺人がストーリー(前半)の鍵になっていることから、ミステリとしても読める。なんとゴージャスなマンガであることか。

 浮世絵にも歌舞伎にも門外漢の私が読んでも面白いのだから、くわしい人ならもっと愉しめるだろう。

 惜しむらくは、本作が未完であるところ。物語の2人の主人公――のちの東洲斎写楽と、のちの六代目市川団十郎――が、まだ若く未熟な時代までしか描かれていないのだ。
 2人は、このあとどのように芸術家として完成されていくのか? そして、彼らと周囲の人々は、どんな人生を歩んでいったのか? 一ノ関圭の中には腹案があるだろう「後半」の物語を、ぜひとも読みたいものだ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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