西村賢太『無銭横町』


無銭横町無銭横町
(2015/02/25)
西村 賢太

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 西村賢太著『無銭横町』(文藝春秋/1404円)読了。

 6編を収めた最新短編集。全体に小粒な仕上がりで、食い足りない。

 たとえば、一編だけある「秋恵もの」の「邪煙の充ちゆく」は、北町貫多が煙草を吸わない秋恵を慮り、「煙草はベランダで吸う」と宣言するものの、自分で決めたそのルールをすぐに破ってしまい……という話。
 秋恵との同棲生活も小説にほとんど書き尽くし、あとはこんな小ネタしか残ってないのだなァ、という印象。

 また、「酒と酒の合間に」という短編は、西村が玉袋筋太郎(名前は作中に出てこないが)の著作の文庫解説を書く顛末を綴っただけのもの。
 もちろん、小説として読ませるだけの工夫はされているのだが、それにしても小ネタすぎ。

 貫多の青春時代を描いた短編も2編入っていて、それらはわりと読ませる。
 2編とも、時系列でいくと『疒(やまいだれ)の歌』の後日談に当たる内容である。
 いずれも、貫多が田中英光にのめり込み始めたころの話。貫多が英光に向ける異様な執着が、物語の駆動力となる。

 とくに、表題作「無銭横町」は、本書の中では一頭地を抜く出来。
 もう20歳になったというのに母親に金をせびり、住みついた安アパートの家賃を堂々と滞納し、「そもそも、自分のような者に部屋を貸した方が馬鹿なのである」とうそぶく“セコい無頼派”ぶりを全開させて、「西村賢太はこうでなくちゃ」と思わせる。

 そう、西村は(というか、作中の北町貫多は)無頼派なのにやることなすこと妙にセコく、そのギャップが笑いとペーソスを生むのだ。
 「無銭横町」でも、食事代にも事欠くありさまの貫多が、文庫本1冊だけを古書店に売りに行く(そして店主に冷たくあしらわれ、怒鳴りつけて逃げ去る)あたりのディテールが、えも言われぬ「味」になっている。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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