安部龍太郎『維新の肖像』


維新の肖像維新の肖像
(2015/04/05)
安部龍太郎

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 安部龍太郎著『維新の肖像』(潮出版社/1836円)読了。

 「隆慶一郎の衣鉢を継ぐ者」とも目される歴史作家の最新作。
 日本人として初めて米イェール大学教授となった世界的な歴史学者・朝河貫一と、「戊辰戦争」を二本松藩士として戦ったその父・朝河正澄の物語だ。

 戦争へと突き進む昭和の日本を米国の地で憂える貫一と、明治維新から戊辰戦争に至る激動の日々を生きる正澄の姿が、交互に描かれる。

 貫一は、父が書き遺した維新期の手記を元に小説を書こうとしており、その作業を通じて亡き父と改めて向き合う。そして、その小説にはやがて『維新の肖像』というタイトルがつけられる。
 つまり、貫一の「いま」と並行して、小説内小説の形で若き日の父の闘いが描かれていくのだ。この凝った構成が十分に成功しており、重層的な魅力をもつ小説になっている。

 貫一は、歴史学者として明治維新を肯定する立場をとっていた。また、厳格すぎる父には生前しばしば反発した。だが、父の手記を精読するうちに、維新への見方が少しずつ変わっていく。
 これは、明治維新肯定史観に疑問符を突きつけ、時代の転換に殉じた東北諸藩の武士たちの「思い」に光を当てた小説である。そして、父亡き後に息子の心中で起きた、父との和解の物語でもある。

 貫一は、戦争へなだれ込んでいった昭和期日本の病根が、じつは明治維新にあったことを見出していく。
 文中には明示されないものの、維新期の薩長の横暴と昭和期の軍部の暴走が、現在の安倍政権の暴走と二重写しになるように書かれている。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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