佐々木敦『ニッポンの音楽』


ニッポンの音楽 (講談社現代新書)ニッポンの音楽 (講談社現代新書)
(2014/12/17)
佐々木 敦

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 佐々木敦著『ニッポンの音楽』(講談社現代新書/864円)読了。

 タイトルを見ると日本の音楽史を通観した本のように思えるが、実際には扱っている範囲は1960年代末から現在まで。このタイトルは、同じ著者の『ニッポンの思想』の続編(音楽編)として構想されたがゆえのものだ。

 佐々木敦もいまや早稲田大学教授だが、『シティロード』などで彼の書くものを昔から読んできた人間にとっては、音楽(&映画)評論家というイメージが強い。
 私にはむしろ、彼が『ニッポンの思想』のような本を出すことのほうが意外だった。本書には、本来の専門分野に立ち返った印象がある。

 過去45年間の「日本のポピュラー音楽の歴史」を、「『Jポップ』という言葉が登場する『以前』と『以後』に、大きく二分割して論じ」た概説書である。

 いくらでも長大になり得るテーマを新書1冊に収めるのだから、枝葉はバサバサ切る必要がある。
 そのために著者が選んだ方法は、章ごとに一つのディケイドを扱い、各章に「主人公」にあたるアーティストを設定する、というもの。章立ては次のようになっている。


第一部 Jポップ以前
第一章 はっぴいえんどの物語
第二章 YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の物語

~幕間の物語(インタールード) 「Jポップ」の誕生~

第二部 Jポップ以後
第三章 渋谷系と小室系の物語
第四章 中田ヤスタカの物語



 ご覧のとおり、第一章は「はっぴいえんど」を主人公に1970年代を扱い、第二章はYMOを主人公に80年代を扱う……という具合になっているのだ。
 ほかのアーティストにも随時言及はされるが、「主人公」との関連の中での言及に、ほぼ限られる。

 ディケイドを象徴し得るアーティストに的を絞ることで、そのディケイドの「流れ」を浮き彫りにする、という手法を著者は選択したのだ。
 この手法は十二分に成功していると思う。総花的にいろんなアーティストを取り上げ、「こんなのもいた、あんなのもいた」とやって時代を映し出そうとするより、よっぽど気が利いている。

 「第二章 YMOの物語」はYMO論としても出色だし、中田ヤスタカについて論じた最終章も、音楽の作り方自体が昔(1970年代あたり)とは根本的に違っている「いま」を浮き彫りにして、目からウロコ。

 『J-POP進化論』(佐藤良明)など類書も多いが、管見の範囲では本書がいちばんわかりやすく、出来がよいと思う。

■関連エントリ→ 麻生香太郎『誰がJ-POPを救えるか?』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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