鈴木大介『最貧困女子』


最貧困女子 (幻冬舎新書)最貧困女子 (幻冬舎新書)
(2014/09/27)
鈴木 大介

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 鈴木大介著『最貧困女子』(幻冬舎新書/842円)読了。

 裏社会・触法少年少女をおもな取材対象に、「犯罪現場の貧困問題」「犯罪する側の論理」をテーマとしてきたルポライターが、「貧困女子」の問題に独自の視点から斬り込んだ1冊。

 鈴木の旧著『家のない少女たち』や『出会い系のシングルマザーたち』(※)にも、貧困問題を描いた本としての側面があった。本書もその延長線上にあり、彼にとっては自家薬籠中の物というべき題材だ。

※本書が売れたためか、『最貧困シングルマザー』と改題して、先頃文庫化。

 巷間話題の「貧困女子」とは、給料が安すぎてギリギリの生活を強いられている非正規雇用の女性などを、おもに指すのだと思う。
 それに対して「最貧困女子」とは、「給料が安い」などというレベルではなく、定収入がなく、それでいてなんらかの理由で生活保護を受給していない女性たちを指す。
 その多くが、援交・援デリや裏風俗など、最底辺のセックスワークにからめとられていく。

 『闇金ウシジマくん』にしばしば登場するような、最底辺に生きる壊れた感じの女性たちが、多数登場する(じっさい、著者は取材先の一部を闇金業者から紹介されている)。

 私はこれまで貧困問題の本をたくさん読んできたが、本書はその中でも一、二を争うダウナーな内容だ。読んでいて気が滅入ってくる。
 たとえば、次のような一節が不意打ちのように登場するのだ。

 僕の取材した家出少女らの中には、親に加えられた「傷害の痕跡」を残した者も少なくなかった。
(中略)
 「ジャンケンができない少女」というのもいた。彼女は親によって指を手の甲側にへし折られ、何年経ってもいくつかの指を握り込むことができないのだ。
「パーしか出せないから、チョキ出されたら100パー負けますね」と笑って言う少女に、何も返す言葉がなかった。



 売春する相手への嫌悪感を消すために薬物中毒になった少女がいた。
 「身体が売れなくなったら死ぬときだ」と真顔で言う16歳の少女は、初めての売春は小学5年生のときだと言った。その身体中に、虐待の傷痕があった。



 日本の生活保護制度は「捕捉率」(受給対象となる人たちのうち、実際に受給している人の割合)が低いことで知られるが、その低さの理由の一端も、本書を読むとわかる。

 彼女らの欲しい物のほとんどを、行政や福祉は与えてくれない。だが実はセックスワークは、彼女らの求めるものを彼女らの肌触りがいい形で、提供してくれる。
 これが、長期間大都市部に家出する少女らが高確率でセックスワークに吸収というか、「捕捉」される理由だ。



 自分の子どもが予防接種を受ける段になって、初めて「予防接種って何だっけ、あたし受けてねぇわ」と気づいたというシングルマザーも登場する。

 彼女たちは、著者が名づけた「三つの無縁」――「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」に阻まれ、行政の保護が届かない場所に生きているのだ。そして、セックスワークという「路上のセーフティネット」によって生きのびている。

 では、そのような「最貧困女子」たちにどう手を差し伸べればよいのか? 最終章では著者なりの処方箋が提示される。
 その一つが、最貧困女子たちへの「恋活」――すなわち、まっとうな恋愛をするために必要な心構えなどを教えることだという。
 最貧困女子の多くが極度の恋愛依存体質であり、ろくでもない男に引っかかる「恋愛自爆率」も異様に高いからだ、と……。
 著者はこの提案を「炎上覚悟の爆弾」と呼んでいるが、私は「けっこうアリ」だと思った。

 気が滅入る本だが、内容は重要だ。鈴木大介はルポライターとして、誰もやっていない社会的意義のある仕事をつづけている。

■関連エントリ
鈴木大介『出会い系のシングルマザーたち』レビュー
鈴木大介『家のない少女たち』レビュー
鈴木大介『家のない少年たち』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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