![]() | ありのままの自分で人生を変える 挫折を生かす心理学 (2014/07/10) 高山恵子、平田信也 他 商品詳細を見る |
最近、自転車をこぐときに疲労を感じるようになり(とくに坂道をのぼるとき)、「この疲れやすさは、もしや重篤な病の兆候か」と不安になった。
ところが、タイヤに空気を入れてみたらスイスイこげるようになり、疲れも感じなくなった(笑)。
タイヤに空気がちゃんと入ってない自転車って、乗っていてすごく疲れるものなのだね。
また、このところ家のパソコンのネット接続がしばしば途切れるので、「ルーターの買い替えどきかな」と思っていたのだが、じつはルーターの接続ケーブルが抜けかかっていただけだった。入れ直したら途切れなくなった。
それだけのことなのだが、「こういうことって、人生にもありがちだろうな」と、ふと思った。
つまり、タイヤの空気が抜けている程度のことを、重いトラブルだと思い込んで悩んでしまうことが、である。
三島由紀夫は太宰治について、「太宰のもっていた性格的欠陥は、少なくともその半分が、冷水摩擦や器械体操や規則的な生活で治される筈だった」と書いた(『小説家の休暇』)。これは、一面の真理をついた言葉だと思う。
ラジオ体操の励行とか、毎日朝日を浴びるとか、その程度のことで雲散霧消してしまう悩みを、宿痾のごとく抱え込んでしまっている人も、世には多いことだろう。
高山恵子・平田信也著『ありのままの自分で人生を変える――挫折を生かす心理学』(サンクチュアリ出版/1620円)読了。仕事の資料として。
先日読んだ同じ著者の『実践! ストレスマネジメントの心理学』の、姉妹編ともいうべき本。
こちらは書き込み式ワークブックになっており、“解説編”の『実践! ストレスマネジメントの心理学』とセットで読むとよい。併読すると、著者の言わんとすることがいっそうよくわかる。
もっとも、本書にも全項目にかんたんな解説は付されているので、単独で読んでもよい。こちらも、ていねいに作られたよい本である。
帯には、「これまでの自己啓発書で救われなかったあなたへ」という印象的な惹句がある。
本書の中で著者は、“自己啓発書で「救われる」人は、人間類型の中のワンタイプでしかなく、自己啓発イデオロギーが合わない人もいる。そういうタイプの人にとって、自己啓発書はむしろ有害だ”という意味のことを述べている。
まったくそのとおりだと思った。
多くの自己啓発書は、外向型、成長・達成感重視型の人向けに作られている。「内向型よりも、外向型のほうが人間として望ましい」という暗黙の前提に沿って書かれているため、内向型の人は、自己啓発書の言うことを真に受けてがんばってしまうと、自分に合わない無理をすることになってしまい、けっきょくうまくいかない。
対照的に、本書は読者が自分のタイプを見極めたうえで、自分に合った「人生を変える」方法を選択できるように作られている。「どのタイプがよい」という価値判断を避け、「ありのままの自分」を肯定するスタンス――「みんなちがって、みんないい」的スタンス――で書かれている。そこに本書の価値もあるのだ。
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