西村賢太『一私小説書きの日乗 野性の章』


一私小説書きの日乗 野性の章一私小説書きの日乗 野性の章
(2014/11/29)
西村 賢太

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 西村賢太著『一私小説書きの日乗 野性の章』(角川書店/1728円)読了。
 『一私小説書きの日乗』『一私小説書きの日乗 憤怒の章』につづく、西村の日記の単行本化第3弾。

 何を食っただの、誰に会っただのというごく普通の日記なのに、不思議と「あと引き」で、ついつい手を伸ばして読んでしまう。
 もっとも、面白さの順番でいけば小説→随筆→日記であって、日記シリーズは読み返したいとは思えないが……。

 本書に記録されているのは、2013年の5月から6月にかけての日々。
 芥川賞受賞後の狂騒が一段落して、じっくり小説に取り組める環境が得られ、しかも仕事は山ほどある。そんな充実の日々が記録されている。

 もしかしたら本書こそ、西村の人生でいちばん幸せな時期の記録になるかもしれない。……などと要らぬことを思ってしまうのは、彼の本の売れ行きが急速に落ちてきているという噂を聞いたからだ。

 内容は、いつもどおり。鯨飲馬食と買淫(「夜、買淫。当たり」などと“評価”が記されるのみ)、編集者たちとの小競り合いと共闘、そして孤独な執筆の日々。

 自分が寄稿している『新潮』の編集長を文中でしばしば罵る(よくホサれないものだ)など、相変わらず私生活ではつきあいたくないタイプの男だが、小説を書くことにだけは真摯に取り組んでいる。
 とくに本書の日記は、初長編『疒(やまいだれ)の歌』の執筆時期と重なっているから、あの作品に力が込められていた様子がまざまざと伝わってくる。

 芥川賞を受賞して収入が一気に増えてからも、西村の食生活が変わらずつつましい(カップ麺やコンビニ食材が頻出し、酒のメインはいまも宝焼酎)点にも、好感がもてる。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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