板橋文夫『WATARASE』


WATARASEWATARASE
(2005/07/23)
板橋文夫

商品詳細を見る


 板橋文夫の『WATARASE』(ウルトラ・ヴァイヴ)を聴いた。

 板橋文夫は私と同郷(栃木県足利市)のジャズピアニストで、『渡良瀬』は彼のソロアルバムの代表作。
 タイトルナンバーの「渡良瀬」は、足利など北関東を流れる渡良瀬川をイメージして作られた、郷愁と詩情に満ちた名曲だ。

 で、話が少しややこしいのだが、今日聴いた『WATARASE』は、元のソロアルバム『渡良瀬』とは別物である。

 こちらの『WATARASE』は、「板橋文夫アンソロジー」と銘打たれているとおり、板橋のベストアルバムであると同時に、彼がこれまで発表してきた「渡良瀬」の別バージョンを集めたもの。
 2枚組で、ディスク1が「渡良瀬」の元バージョンを含むベストアルバム、ディスク2が「渡良瀬」のバージョン違い7曲を集めたアンソロジーになっている。

 つまり、このアルバムには「渡良瀬」が計8つのバージョンで収められているわけだ。
 ピアノソロあり、カルテット・バージョンあり、ライヴ録音あり。さらに、民謡歌手をヴォーカルに据え、オーケストラと共演した歌詞入りの「交響詩」バージョンもある。

 私は「渡良瀬」こそ、日本が世界に誇るジャズの名曲の一つだと思う。ハービー・ハンコックの「処女航海」あたりに匹敵する価値を持つ曲であろうし、「これぞ『和』のジャズ、ジャバニーズ・ジャズだ」と感ずる。
 まあ、私自身が渡良瀬川のほとりで生まれ育ったので、多少の身びいきはあるのだが。

 ……ただ、いかな名曲といえども、さすがに8つのバージョンをつづけざまに聴いたら、ちょっと飽きてきた(笑)。

 8つのバージョンのうち、私がとくに気に入ったのは次の3つ。
 森山威男のアルバム『スマイル』に収められた、カルテットでの演奏。
 神奈川県フィルハーモニー管弦楽団と民謡歌手・金子友紀のヴォーカルをフィーチュアした、雄大な「交響詩」バージョン。
 ソロアルバム『一月三舟』に収められた、水墨画を思わせる清冽なピアノソロ・バージョン。

 これら3つは、『渡良瀬』の元バージョンをしのぐ出来だと思った。
 もっとも、この曲が最初にレコーディングされたのはアルバム『スマイル』においてだそうだから、『渡良瀬』のものはそのセルフカバーという位置づけになるのだが……。


↑森山威男カルテット・バージョン。板橋自身が渡良瀬川のほとりでピアノを演奏する映像となっている。


↑「交響詩」バージョン。金子友紀のヴォーカルも、ストリングス・アレンジも素晴らしい。

 ちなみに、板橋文夫には、やはり川の名を冠した「利根」という曲もある(『渡良瀬』所収)。これも「渡良瀬」と甲乙つけがたい名曲である。

関連記事

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

ケノーベルからリンクのご案内(2015/01/10 08:48)

足利市エージェント:貴殿の記事ダイジェストをGoogle Earth(TM)とGoogle Map(TM)のエージェントに掲載いたしました。訪問をお待ちしています。

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
31位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
22位
アクセスランキングを見る>>