永江朗『「本が売れない」というけれど』


(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書)(046)「本が売れない」というけれど (ポプラ新書)
(2014/11/04)
永江 朗

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 永江朗著『「本が売れない」というけれど』(ポプラ新書/842円)読了。

 ピーク時(1996年)からの17年間でじつに36%も売上が落ち、しかも下げ止まりがまったく見えない日本の出版界。
 寒風吹きすさぶその現状を、本の流通・販売にも造詣が深い(元書店員でもある)ベテラン・ライターが、改めてじっくりと考えてみた本。

 著者が挙げる「本が売れなくなった要因」は、ブックオフの台頭、ネットとスマホの普及、少子高齢化の進行など、誰もが思い当たることばかり。なので、「そうだったのか!」と膝を打つ驚きはほとんどない。

 ただし、だからつまらないかといえばそんなことはない。ブックオフの台頭、スマホの普及などがどのように本(新刊書)を売れなくしていったかが、改めて整理されて説明され、ことの本質がクリアに見えてくる面白さがあるのだ。

 とはいえ、私が知らなかったこともけっこう書かれていた。
 たとえば、最近の本の初版部数が少なめなのは、「本が売れないから」だけではなく、印刷製本技術の革新にもよる、という指摘。

 皮肉なことに、大量かつ高速で印刷できる機械は、少部数の印刷が苦手だった。少部数つくろうとすると、どうしても1部あたりのコストが高くなった。ところが技術革新により、少部数でも安く印刷・製本できるようになった。だったら、いままで半年かけて3000部売っていた本は、最初に1500部だけつくって、あとは500部ずつ3回増刷すればいい。そう考える出版社が増えた。



 なるほどなるほど。
 
 また、街の小さな本屋さんがどんどん淘汰され、書店がアマゾンとメガストアに収斂されつつある現状についても、わかりやすく解説されている。

 著者の文章は、「ライターの文章」のお手本のようだ。読みやすくて平明、無色透明で、けっして自分の個性を読者に押し付けてこない文章(ゆえにどんな色にも染まり得る)なのである。

 本書のもう1つの価値は、本が売れない主因は「読書離れ」ではないことを、データから改めて浮き彫りにしている点にある。
 日本人の読書量(必ずしも「本」ではない、文字を読む量だが)は昔に比べて落ちておらず、本や雑誌を「買って読む」量が激減しているだけなのだ。

 エピローグでは、“どうやって「本の文化」を守っていけばよいのか?”という、著者が考える処方箋が開陳される。ここも、同意するかどうかはともかく一読の価値がある。

■関連エントリ→ 永江朗『本の現場』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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