中野信子『努力不要論』


努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本
(2014/07/06)
中野信子

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 今日は都内某所で、社会人野球チーム「茨城ゴールデンゴールズ」の監督兼選手である片岡安祐美さんを取材。
 ゴールデンゴールズの歩みを綴った、萩本欽一著『野球愛』(ソフトバンク新書)を読んで臨む。
 
 テレビや雑誌で見るよりも、実物のほうがはるかにカワイイ。
 欽ちゃんをして、「いい目をしている。こんな目に会ったのはキムタク以来だ」と言わしめた彼女の目ヂカラは、やはり強烈。間近で見ていたらポ~ッとなった。

 まだ28歳の若い娘さんなのに、監督として立派にチームをまとめあげている様子にも感服。人を惹きつける強い魅力をもった人だと思う。


 行き帰りの電車で、中野信子著『努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本』(フォレスト出版)を読了。

 挑発的なタイトルはアイキャッチであって、著者は「すべての努力が不要だ」と主張しているわけではない。“努力にも正しい努力と間違った努力がある。無駄な間違った努力はやめましょう”と言っているだけなのだ。

 間違った努力とは、「戦略も何もなく、ただがむしゃらにがんばる努力」であり、正しい努力とは「①目的の設定、②戦略の立案、③実行の3段階のプロセスを経た努力」のこと。著者は前者を「狭義の努力」、後者を「広義の努力」と呼ぶ。

 さらに、「狭義の努力」とは、「肉体・精神・時間への盲目的な負担に主眼を置くもの」であり、「行動のベクトルはまったく目的に近づいていないのに、本人は『がんばっている』『目的に近づいている』と思い込んで」しまいがちだと言う。
 
 人間は“こんなに努力している自分”に酔って「努力中毒」に陥りやすく、それが人を間違った努力に走らせる大きな要因である、との主張は新鮮だ。

 努力している自分――。
 これはとても中毒性の高いものです。努力しているさなかにあって、努力すること自体が目的になってしまっている人は、やはり「努力している自分」に喜びを感じているのです。
 それを示す実験があります。
 ダイエットをして、「今日はほとんど食べなくてよかった」とか、「身体に良いものを食べた」と認知している人は、倫理的に悪いことをする傾向があるというのです。(文字強調は原文ママ。以下同)



 「努力中毒」になり、自分を痛めつける無駄な努力自体が目的化してしまう。だからこそ努力が報われない――世に蔓延するそのような間違った努力のありようを、著者はさまざまな角度から否定していく。
 
 一般的な自己啓発書の主張は、「努力は必ず報われる」という「努力教」であり、読者を間違った努力に向かわせやすい。その意味で、本書は自己啓発書イデオロギーの対極にある内容だ。と同時に、「努力教」を否定した新しいタイプの自己啓発書ともいえる。

 中野さんの2年前の著作『世界で活躍する脳科学者が教える! 世界で通用する人がいつもやっていること』も、やはり「新しいタイプの自己啓発書」と呼びたい内容であった。

 してみると、彼女は“脳科学の知見を援用した、科学的に正しい自己啓発書”を目指しているのではないか。
 本書においても、メモしておきたいような脳科学の知見が、随所に登場する。たとえば――。

 虐待を受けると前頭前野の発達が妨げられ、薄いままになってしまうことがあります。子供のころは愛情をたっぷり与えてあげないといけないというのは、愛情が脳にとっての栄養のようなものだからです。
 科学的な実験から得られた知見を、まわりくどくないようにとても簡略化してお伝えしようとすると、なぜか古くから多くの人に語られてきた道徳観や倫理観などと合致していくというのは、とても興味深い現象だと思います。



 ストレスというのは、ありすぎても足がすくんでしまって、課題を遂行しようというモチベーションが削がれてしまうのですが、なさすぎてもやる気は起きません。これは「ヤーキーズ・ドッドソンの法則」といって、実験動物で見つかった現象ですが、人間にもあてはまります。
 適切なストレスがかかることが、人の力を最大に引き出します。



 私がいちばん目からウロコだったのは、「セロトニントランスポーター」(神経細胞間でやりとりされるセロトニンの量を調節するタンパク質)の量にも民族的差異があり、「日本人は、世界で最もセロトニントランスポーターが少ない」との指摘。

 セロトニントランスポーターが少ないと、脳内のセロトニンが少なくなって不安にかられやすくなる。ゆえに、「『真面目にやっているのに報われない……』と、世界で一番感じやすいのが日本人なのです」と、著者は言うのだ。ううむ……。
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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