中村淳彦『日本の風俗嬢』


日本の風俗嬢 (新潮新書 581)日本の風俗嬢 (新潮新書 581)
(2014/08/09)
中村淳彦

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 中村淳彦著『日本の風俗嬢』(新潮新書/842円)読了。

 同じ著者が2年前に出した『職業としてのAV女優』の続編というか、風俗嬢編である。刊行は8月で、いま私の手元にある本は10月発行の9刷(!)。売れているのだ。

 著者は性風俗業界の取材を長年つづけてきたライターだから、さすがに現状にくわしいし、そのうえ本書のためにも丹念な取材を重ねている。

 『職業としてのAV女優』は、AV女優に求められるスペックがどんどん高くなり、その一方で業界の不況が進んでいる現状を明かして衝撃的だった。一部のハイスペックな女性を除けば、AV女優は普通のOLより稼げない仕事になっているというのだ。

 本書で明かされた日本の風俗嬢たちの現状も、それとよく似ている。風俗嬢の「偏差値」は上がり、一方では業界の供給過剰・低価格化競争が進み、低スペックな女性はそもそも風俗店に採用されないし、ハードルの低い底辺店に勤務しても、OL並みかそれ以下の収入しか得られないという。

 風俗嬢は超高収入で消費と遊びが好き、というのは、過去の栄光に基づいた時代錯誤の認識である。経営者が女性から搾取して暴利を貪っているというのも同様だ。



 第三章「激増する一般女性たち」と、第四章「風俗嬢の資格と収入」が、とくに面白い。ここでいう「資格」とは、容姿や能力(知性やコミニュケーションスキルなど)のことである。

 供給過剰なので、雇用する性風俗店と客による女性の選別が始まる。容姿を中心とした外見スペックだけではなく、接客サービス業なので技術、育ちや性格や知性なども含めたコミュニケーション能力が加味されて、性風俗がセーフティネットではなくなり、選ばれた女性が就く職業になってしまった。
(中略)
 貧困に悩んで最後の手段として覚悟をしても、そこに食い込めるだけの外見スペックと能力を持っていなければ門前払いとなる。



 カラダを売りたくても売れない層が大量に現れたのは、おそらく歴史的に現在が初めてではないか。



 「性風俗業界には軽度の知的障害を持った女性が大量に流入している」という話が、少し前にNHKのニュース番組「おはよう日本」でも取り上げられ、話題をまいたが、著者はそれを否定する。

 一般女性でさえ底辺に近い店を含めても約半数が門前払いとなっている厳しい現状である。従ってそのような雇用は店側にメリットがない。



 軽度知的障害をもつ風俗嬢がいないわけではないが、噂されるほど多くはないだろう、というのだ。このくだりは「なるほど」と思った。

 風俗業界についての先入観を次々と覆され、目からウロコが落ちまくる本。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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