川成洋『スペイン内戦』ほか


スペイン内戦―政治と人間の未完のドラマ (講談社学術文庫)スペイン内戦―政治と人間の未完のドラマ (講談社学術文庫)
(2003/07)
川成 洋

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 一昨日から昨日にかけて、取材で名古屋へ――。
 先週にも別件の取材で名古屋に行ったばかりだが、不思議とつづくときにはつづくものなのだ。

 行き帰りの新幹線で、川成洋著『スペイン内戦――政治と人間の未完のドラマ』(講談社学術文庫)、斉藤孝著『スペイン戦争――ファシズムと人民戦線』(中公文庫)を読了。
 仕事上の必要があってスペイン内戦(スペイン戦争)について調べているので、資料として。

 このうち『スペイン戦争』のほうは、元本が1966年刊の古い本。いま読むとさすがに古臭くて、スペイン内戦の概説書としては物足りない。
 著者は、本書の執筆時点ではスペインに行ったことがなかったそうだ。日本人の海外渡航がまだ珍しかった時代の書物なのである。その意味でも時代的制約を感じさせる。

 対照的に、もう1冊の『スペイン内戦』は取材・調査の厚みが感じられ、読み応えがある。スペイン史学者の著者は、スペイン内戦を義勇兵として戦った人々と交友を結び、彼らに直接インタビューも重ねたうえで本書を書いているのだ。

 スペイン内戦の概説書として優れているし、ジャック白井(日本人で唯一、スペイン内戦に義勇兵として参戦)ら、義勇兵たち個々に光を当てた人間ドラマとしても感動的だ。

 スペイン内戦というのは不思議な戦争で、戦争であるにもかかわらず、どこかロマンティックな物語性を帯びている。ヘミングウェイやアンドレ・マルローなどの世界的文化人たちが数多く参戦したし、多くの小説・映画などに描かれた。
 この『スペイン内戦』も、死んだ兵士を悼む詩などが随所に引用されていて、全体に文学的香気を感じさせる。

 とはいえ、内実を掘り下げてみれば、多くの戦争と同様、血なまぐさくドロドロした暗部が見えてくるのだが……。

 この『スペイン内戦』は、ロマンティックな表層と内実の暗部をともに過不足なく描いており、そのバランスのよさにおいても優れた書である。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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