山本おさむ『「どんぐりの家」のデッサン』


「どんぐりの家」のデッサン―漫画で障害者を描く「どんぐりの家」のデッサン―漫画で障害者を描く
(1998/05/26)
山本 おさむ

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 山本おさむ著『「どんぐりの家」のデッサン――漫画で障害者を描く』(岩波書店/1728円)読了。仕事の資料として。

 『遙かなる甲子園』『わが指のオーケストラ』『どんぐりの家』と、障害者の世界を描く骨太の長編に挑んできたマンガ家が、一連の作品に込めた思いと執筆の舞台裏を明かすエッセイ集。
 山本は文章もうまく、じつに読ませる内容になっている。

 障害者問題に関心のある人にとって示唆に富むのは当然だが、マンガ史の生きた資料としても価値ある内容になっている。
 というのも、最初の『遙かなる甲子園』開始当時、障害者を主人公にしたマンガは業界のタブーになっており、山本はこの分野を切り拓いたパイオニアであったから(本書第1章のタイトルは、「障害者描くべからず――差別表現と漫画界のタブー」)。

 「マンガの歴史は『差別との闘い』との闘いだ」と言われる。「このマンガのこの表現は差別だ!」と糾弾され、回収や絶版となったマンガは枚挙にいとまがない。
 むろん、それらの糾弾・批判には妥当性のあるものが多かったが、批判を恐れて障害者(など)を描くこと自体がタブーとなってしまっては行き過ぎであろう。

 山本も、本書で次のように述べている。

 差別表現の問題は、何も差別語を使うことだけを指すのではない。根本的には、作者の障害者観が問われているのだ。にもかかわらず、出版社の自主規制なるものは、ほとんど言葉のチェックに終始し、抗議する人たちや、その人たちが提起する差別問題を矮小化しているように私には見受けられる。また作者を矢面に立たせないような配慮もあるため、作者が当事者から学ぶ機会をも奪っているようだ。



 山本は真摯な創作姿勢で障害者の世界を描き、そのマンガをヒットさせることでタブーを打ち破り、マンガ表現の幅を広げたのである。

 障害者についてほとんど何も知らなかった山本が、『遙かなる甲子園』『わが指のオーケストラ』『どんぐりの家』の3長編を描いた10年に及ぶプロセスで多くのことを学び、認識を深めていく。本書はその“障害者観の深化”の過程をたどったものでもある。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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