橘玲『バカが多いのには理由がある』


バカが多いのには理由があるバカが多いのには理由がある
(2014/06/26)
橘 玲

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 昨日は、取材で横浜市磯子区へ――。
 「接客コンテスト」で全国優勝した、某大手スーパーの店員さんの取材。さすがに人当たりが柔らかく、笑顔が魅力的な青年であった。


 行き帰りの電車で、橘玲(たちばな・あきら)著『バカが多いのには理由がある』(集英社/1512円)を読了。

 2012年11月から今年5月にかけて、『週刊プレイボーイ』に連載された時評コラムの単行本化。挑発的なタイトルだが、中身はタイトルほど「上から目線」ではない。

 一昨年から今春にかけて起きたさまざまな出来事をお題にした時評コラムが、政治・経済・社会・心理の4分野に分けてまとめられている。 

 著者の専門は経済・金融だから、やはり経済について論じたパートがいちばん読み応えがある。また、政治などを論じたコラムでも、経済学的知見を援用した部分に卓見が多い。

 私が付箋をつけた箇所を引用してみよう。

 経済学では、人間が完全に合理的であれば選挙などに行くわけがない、と考えます。国政選挙では自分の1票が候補者の当落に与える影響力はほとんどゼロですから、貴重な休日にわざわざ投票所まで出かけていく費用対効果もゼロで、投票率は業界団体や宗教団体など、投票の動機が明快なひとの数で決まることになります。
 実際には投票率はこのシニカルな仮説をはるかに超えていて、「ひとは常に経済合理的に行動するわけではない」という行動経済学の知見の正しさを証明しています。



 日本の宝くじは期待値(当せん確率・当せん金)が5割未満で、世界でもっとも割の悪いギャンブルです。そのため経済学者はこれを「愚か者に課せられた税金」と呼んでいますが、この国では自治体関係者とスポーツ関係者が“愚か者”の財布を奪い合っているのです。



 いちばん目からウロコだったのは、日本が先進国中でいちばん“母子家庭に冷たい政策”をとってきた理由を論じたコラム(「母子家庭を援助すべき“不都合”な理由」)。

 生活困窮者への自立支援として行われる職業訓練は、「母子家庭の失業者には有効」だが、「それ以外にはほとんど役に立たず、とりわけ低学歴の若者と高齢者への教育投資はまったく効果がない」という(福祉就労支援の先進国である、英米の経済学者の政策評価による)。
 
 したがって、「もっとも効率的な政策は生活保護から母子家庭を切り離し、従来の基準を上回るじゅうぶんな援助をすることです」と著者は言い、次のようにつづける。

 それではなぜ、こんなかんたんなことができないのでしょうか。理由は、母子家庭以外の受給者が母集団(ふつうのひとたち)とは異なると政府が認めることになってしまうからでしょう。
 政治家にとっては、“不愉快な事実”をひとびとに告げるより、母子家庭が苦しむほうがずっといいのです。



 著者のこの見立ての正否はさておき、傾聴に値する意見だろう。

■関連エントリ
橘玲『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』レビュー
橘玲『貧乏はお金持ち』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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