鈴木みそ『限界集落温泉』


限界集落(ギリギリ)温泉第一巻限界集落(ギリギリ)温泉第一巻
(2013/01/05)
鈴木みそ

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 鈴木みその『限界集落温泉』(ビームコミックス)全4巻を、Kindle電子書籍版で一気読み。「限界集落」の上に「ギリギリ」とルビが振ってある。

 最新作『ナナのリテラシー』がすごく面白かったので、前作にあたるこの作品を読んでみた。
 第1巻だけがお試し価格100円で売っていたのでポチッてみたのだが、面白くてけっきょく全巻買ってしまった。

 伊豆の山奥の限界集落にある、かつては繁盛していたが、いまは廃業寸前の温泉宿が舞台。
 仕事から逃げ出して温泉街にやってきた天才的ゲームクリエイターが、ひょんなことからその宿の「再生計画」の指揮をとることになる。

 そこに偶然死に場所を求めてやってきた(このへんの展開はいかにもご都合主義だが)メンヘラ・コスプレアイドルを宿のシンボルに仕立て、彼女を追ってやってきたファンのオタクたちをブレーンに巻き込んで、型破りな温泉再生計画が進められていく。

 限界集落という社会問題を扱ってはいるものの、社会派作品というより、むしろビジネス・マンガとしての側面が強い。「倒産寸前企業の再生ストーリー」として読んでも、なかなかよくできている。
 奇抜な戦略を矢継ぎ早にくり出す主人公のゲームクリエイターは、『ナナのリテラシー』における天才コンサルタント・山田仁五郎の原型になっているわけだ。

 『ナナのリテラシー』に比べると、まだこの路線を試行錯誤中という趣がある。ビジネス・マンガ、コメディ、オタク向けのマニアックなマンガの要素がゴチャゴチャに混在しており、どっちつかずで中途半端な印象があるのだ。

 それでも、つづきが気になって最後まで読まずにはいられないストーリーテリングの冴えは、なかなかのもの。

 じつは先日、鈴木みその旧作『銭』も読んだのだが(例の「カドカワ祭り」で安かったので)、これはあまり面白くなかった。
 鈴木みそは、この『限界集落温泉』でマンガ家として一皮むけ、『ナナのリテラシー』に至って一つの完成をみたと言えるのではないか。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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