さそうあきら『花に問ひたまへ』


花に問ひたまへ (Kindle 連載)花に問ひたまへ (Kindle 連載)
(2014/05/15)
さそうあきら

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 さそうあきらの新作『花に問ひたまえ』を、Kindleで購入。
 
 「Kindle 連載」という新しい試みの話題作である。
 Kindle電子書籍で一度購入すると、月に一度、追加料金なしで新しい回がKindleに配信されてくるというもの。現在は第5話まで配信されている。要するに、マンガ家にとっては月刊誌連載と同じだ。

 全12話までつづく予定とのことで、これで400円はかなり安いと思う。完結後に紙版も出るだろうけど、コミックスは恐らく800円以上するだろうから。
 本作は双葉社が版元になっているが、マンガ家が単独でKindle 連載をするケースも、今後は増えていくだろう。

 まだ連載途中だから作品については評価しにくいところだが、5話まででも十分に引き込まれる内容。傑作の予感がする。

 生まれつき目の見えない青年・一太郎と、彼と偶然に出会った若い女性・ちはやのラブストーリーである。

 綿密な取材に基いて描いているだろう一太郎の行動のディテールが、すこぶるリアル。
 “傘をさすと周囲の音が聞き取りにくいから、少しの雨なら傘をささない”とか、「盲人の友人はみんな一度は(駅の)ホームに落ちている」とか……。

 盲目の人の見ている世界が、読者にもたしかな重みで伝わってくる。

 ヒロイン・ちはやは、アルコール依存症の父親を抱え、貧しい生活を支えるため、ダブルワークで身を粉にして働いている。自らの不遇にささくれだった彼女の心が、一太郎と周囲の人々のあたたかさに触れて、少しずつ解きほぐされていく。

 ……と紹介すると、ありがちな「お涙ちょうだい」話に思われてしまうかもしれない。
 だが、実際に読んでみればそうではない。淡いユーモアが随所に織り込まれ、さわやかな読後感の作品であり、従来の「障害者もの」の枠を軽やかに超えている。
 今後の展開が楽しみだ。

■関連エントリ→ さそうあきら『ミュジコフィリア』レビュー

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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