エレクトロマグネッツ『エレクトロマグネッツ』


エレクトロマグネッツエレクトロマグネッツ
(1998/11/26)
エレクトロマグネッツ

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 エレクトロマグネッツの『エレクトロマグネッツ』をヘビロ中。

 エレクトロマグネッツは、あのエリック・ジョンソンがソロデビュー以前に在籍していたアメリカのジャズ・ロック・バンド。
 地元テキサスでの局地的人気はすごかったそうだが、一般的人気はほとんど得ないまま解散した短命なバンドである。

 これは、彼らが1975年に発表した唯一のアルバムのリイシュー。
 のちにエリック・ジョンソンがグラミー賞を3度も受賞する人気ギタリストになってから、お蔵入りになっていた幻のセカンド・アルバムも発売されている(私は未聴)。

 いやー、これはすごい。
 楽曲といい、演奏といい、その質の高さはマハヴィシュヌ・オーケストラやリターン・トゥ・フォーエバー、ブランドXなどの諸作と比べても遜色ない。ジャズ・ロックの隠れた名盤である。

 こんなにすごいバンドとアルバムが、なぜもっと売れなかったのだろう。
 RTFの大ヒット作『浪漫の騎士』と同年のアルバムなのだから、「時代と合わなかった」というわけでもない。もう少しがんばって活動をつづけていたら、RTFやマハヴィシュヌと並び称される人気バンドになっていたかもしれない。

 ライナーノーツによれば、フランク・ザッパはエレクトロマグネッツのことを、「ユーモアのセンスのあるマハヴィシュヌ」と評したという。
 たしかに、マハヴィシュヌの音楽はユーモアとは無縁だ。一方のエレクトロマグネッツは、「ハワイアン・パンチ」なんて曲名など、随所にユーモアが感じられる。

 ただ、サウンド的にはマハヴィシュヌより第2期(ジャズ・ロック期)RTFに近い。チック・コリアのRTF同様、キーボーディストがリーダー(こちらはスティーヴ・バーバーという人)のバンドだし……。

 エレクトロマグネッツを「フュージョン・バンド」と紹介している記事もネット上に散見されるが、フュージョンと呼ぶにはあまりにヘヴィーで複雑なサウンドである。
 それでいて、頭でっかちの退屈な音ではない。ライナーにいうとおり、「ジャズの知的な喜びと理屈抜きのロックの楽しさが両立」している音。まぎれもないジャズ・ロックだ。

 このアルバムでは、一部の曲にヴォーカリストやサックス・プレイヤーがゲスト参加している。ゲスト・ヴォーカリストは、なんとソロ・デビュー前のクリストファー・クロス(クリス・ゲッパート名義)だ。
 ヴォーカル入りの曲はほとんどプログレであり、サックス入りの曲はまるでウェザー・リポートだ。つまり、かなり多彩なアルバムでもある。 

 そして、何より特筆すべきはエリック・ジョンソンのギター。
 エリックは1954年生まれだから、本作録音時にはまだ20歳そこそこ(内ジャケットに載った写真は少年のようにあどけない)。
 にもかかわらず、その若さですでにギタリストとして完成されている。たんにテクニカルなだけではなく、ものすごく流麗なギターを早くも披露しているのだ。恐るべき早熟ぶりである。





 あまり期待せずに聴いたのだが、よい意味で予想を裏切られた。埋もれさせるには惜しい名盤だ。

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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