工藤啓・西田亮介『無業社会』


無業社会 働くことができない若者たちの未来 (朝日新書)無業社会 働くことができない若者たちの未来 (朝日新書)
(2014/06/13)
工藤 啓、西田亮介 他

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 工藤啓・西田亮介著『無業社会――働くことができない若者たちの未来』(朝日新書/821円)読了。仕事の資料として。

 若年就労支援を専門とするNPO「育て上げネット」の理事長と、若手社会学者による共著。対談集ではなく、章ごとに執筆を分担している。

■関連エントリ→ 西田亮介『ネット選挙』レビュー

 若年無業者はいまや200万人を超え、15歳~39歳の「若者」のうち、およそ16人に1人にのぼるという。
 本書は、この問題の概説書。工藤が担当した章ではNPO活動をふまえた現場の具体的実例とデータが紹介され、西田は社会学者として歴史的・大局的に解説を加えている。ミクロとマクロ――2つの視点から無業社会が論じられることで、この問題についての的確な全体像が提示されるのだ。

 「若年無業者」に関する世間一般のありがちなイメージ――「いい若い者が働かないなんて、怠け者か、仕事の選り好みしすぎているかのどちらかだろう」とか、「どうせ、低学歴で非正規雇用しか経験のないヤツが『若年無業者』になるのだろう」など――が、具体的事例とデータによって次々と覆されていく。

 たとえば、第2章は丸ごと、「育て上げネット」に相談に訪れた若年無業者の事例集になっているが、登場する若者の多くは高学歴だ。中には、税理士試験に合格したのに無業者に陥った例まである。
 それに、彼らは「働く意欲のない怠け者」でもない。

 無業の若者を「働く意欲がない存在」という前提で考えるとするならば、若年無業者の75・5%が過去に働いた経験を持っている事実をどう捉えるべきだろうか。(第3章)



 働きたくても働けない若者を大量に生み出す「構造」が、すでに日本にはできてしまっている。若年無業者を「怠け者」「甘えるな」と非難するばかりでは、何の解決にもならないのだ。

 構造的問題である以上、誰にとっても他人事ではない。
 家族がいつ若年無業者になっても不思議はないし、若年無業者の増大は大きな社会的コストとなる。将来の社会保障の担い手となるはずの若者たちが、社会保障を受ける立場になってしまうのだから……。
 1人の若年無業者が、25歳から65歳まで正社員として働く場合と、ずっと生活保護で暮らす場合を比べたら、そのギャップは1億5000万円にのぼるという。
 
 本書は、若年無業者の増大がいかに深刻な社会問題であるかという解説がメイン。したがって、「では、どうしたらよいのか?」という具体的な処方箋はあまり書かれていない。
 それでも、若者の就労という問題を考えるうえで有益な本だ。 
 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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