さいきまこ『陽のあたる家』


陽のあたる家~生活保護に支えられて~ (書籍扱いコミックス)陽のあたる家~生活保護に支えられて~
(2013/12/16)
さいき まこ

商品詳細を見る


 さいきまこの『陽のあたる家――生活保護に支えられて』(秋田書店/756円)を読んだ。仕事の資料として。

 「マンガでわかる生活保護」という副題のとおり、ストーリーマンガの形式で生活保護制度についての誤解を解いていく啓蒙的コミックである。
 
 ごく普通の4人家族が、夫の病気を機に困窮に陥り、生活保護受給世帯となる。家族が陥る生活苦のディテールが、高いリアリティで描写され、身につまされる。
 生活保護申請に至るまでの心の葛藤や、市役所で行われる「水際作戦」(申請を受け付けずに追い返す)の実態なども、丹念に描かれている。

 働きながらでも生活保護が受給できる(「最低限度の生活」を営むのに不足な分だけ)ことなど、制度について誤解されやすい点が、ストーリーに組み込まれて手際よく説明されていく。
 中編といってよい長さだが、これ1冊読めば生活保護についてのあらましは理解できるだろう。「マンガによる生活保護入門」として、上出来の作品といえる。

 難を言えば、絵柄があまりにも没個性的で、まったく魅力がない。

 また、生活保護受給世帯になったとたん、周囲の人間がいっせいにネガティブな反応を示すという描写は、ちょっとマイナス面を誇張しすぎだと思う。
 主人公夫婦は病院で見知らぬ男から(医療費が無料であることについて)「オレらの税金で好き放題しやがって!」と罵倒され、2人の子どもたちは学校で「ヒンミーン!」とか呼ばれてイジメられ、母親はPTAでほかの母親たちから「税金で暮らしてるのにいい気なものね」などと槍玉に上げられる……。うーん、スゴすぎ。

 まあ、現実にそういう事例がまったくないわけではないだろうが、それにしてもたたみかけすぎ。
 「生活保護を受けるとこんなヒドい目に遭うのか。やっぱやめとこう」と思う読者だって、いないとはかぎらない。その意味で、これらの描写は逆効果だと思う。

 ……と、ケチをつけてしまったが、ネット上の生活保護バッシングだけ見て「わかったつもり」になっている連中の蒙を啓くには、よいマンガだと思う。

 そういえば、あの柏木ハルコが、福祉事務所を舞台に生活保護を描いたマンガを描いているらしい(『ビッグコミックスピリッツ』連載中の『健康で文化的な最低限度の生活』)。こちらも読んでみよう。

関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

里親募集中

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
31位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
22位
アクセスランキングを見る>>